ユビキタスは4月26日、節電の見える化を目指したソリューションとして、無線LANモジュールを電源タップに内蔵した「iRemoTap(アイリモタップ)」システムの試作を行っていることを発表した。
今回の試作品は、組込機器制御機能およびWebサービス連携機能を、同社の組込機器向け無線LANソリューション「Ubiquitous AIR NOE Solution」および無線LAN対応電源タップに搭載することで実現している。同無線LANモジュールにはUbiquitous AIR NOE Solutionが動作するルネサス エレクトロニクス販売が提供する製品が組み込まれている。
無線LANモジュールを電源タップに内蔵した「iRemoTap(アイリモタップ)」と搭載されている無線LANモジュール。電源タップそのものは海外で販売されている特定小電力無線向けのものを用いており、シリアルインタフェースを用いて無線LANモジュールを接続したという。そのため、実態のハードウェアの開発自体は1カ月もかかっていないとのこと |
同システムは、それぞれの機器がいつどの程度電力を消費しているかなどの、従来は確認することが難しかった個々の機器の節電状況の見える化を実現しようというもの。また、無線LANを活用した遠隔操作機能により、消し忘れた電気のスイッチのオン/オフなどのリモート操作も可能になるという。
2011年3月1日付けで同社代表取締役社長に就任した三原寛司氏 |
2011年3月1日付けで同社代表取締役社長に就任した三原寛司氏は、「同システムはいわゆる節電ソリューション。節電という話題が、地震の関係もあり、話題になってるが、同システムの開発は2010年の秋からスタートしたもの。そのままでは効果が見えづらい節電をどうやって見える化するか。その答えの1つとなるのが同システム。ただし、これはこのまま商用化するつもりはない」とし、今回公開したものは、あくまで既存の特定小電力無線向け電源タップに無線LANモジュールを搭載しただけのテストモデルとした。
同システムのポイントは、同社が組み込みソフトウェアを中心に提供してきたメーカーであるという点。今回も無線LANモジュールに各種ソフトを搭載しているが、ここにWebサービスを連携させるという点が新たな試みとなっている。
同無線LANモジュールにはTCP/IPのほか、Wi-Fiの認証などを簡単にボタン1つでできるWPSの機能や設定不要でWebサービスへアクセスできる機能などが搭載されている。これまでも、特定小電力無線としてZigBeeなどを用いたソリューションはあったが、その場合はインターネットなどとの接続には何かしらのブリッジを介する必要があった。「我々は"Internet of Things"という提案を行っているが、それはこれまでの人と人をつなぐインターネットから、モノとモノがつながる時代になってきたというメッセージ」(同)であり、電源タップに接続した機器の電力使用データをネットワーク上に送信し、ユーザーはサーバからその様子を確認することができる。無線LANを用いているので、ブリッジルータなどの追加機器が不要で、既存のWi-Fiルータなどを用いることで対応できるという容易性も売りになるとする。
実際のWebサービスも現状、至ってシンプルなものが検討されている。WPSにより電源タップとアクセスポイントを1ボタンで接続、インターネットとつながった後は、電源タップ内に搭載されているソフトウェアが自動的にWebサイトに転送する。各モジュールにはシリアル番号が割り振られており、各コンセントごとの電力消費状況やタップごとの電力消費量を時系列順に確認することができる。また、計測周期やアップロード周期、一定の電力消費量に達したときにアラートを出す機能なども用意されており、Webサイトにアクセスできる環境であれば、タブレットであってもスマートフォンであっても良い。ちなみに、電源のオン/オフ機能はオフは有効だが、オン機能は人がいない際に、危険なものがオンになり火事などが生じても問題なので、搭載するかどうかは今年度行う実証実験での使い勝手などを判断してから、としている。
同システムはまだ開発中のもので、Webサービスとしてはそれぞれの機器がどの程度使われているのか、などの使い方のコンサルティングやサービス利用者同士のソーシャル機能なども入れていく方針だが、最終的にサービスとしてどういった形態で提供していくか、自社提供とするのか、そうした基盤をすでに有しているメーカーと協力するのか、などについてはまだ不透明な状況で、さまざまな可能性を考慮していくとする。
なお、同システムは2011年5月11日より東京ビッグサイトにて開催される組み込み技術の展示会「組み込み開発技術展(ESEC) 2011」の同社ブースにて展示ならびにコンセプトデモが実施される予定となっている。同社ブースでは、同システムのほか、無線LANに振動センサや赤外線センサを接続することで、家屋内の状況感知を行う「ホームセキュリティソリューション」やタブレット・スマートフォンとホームネットワーク機器の連携を行い、DLNAを介したコンテンツ視聴やタブレットなどをコントローラとして活用する「デジタルコンテンツソリューション」などの展示が予定されている。