NECは2月9日、記者説明会を開催し、執行役員常務の山元正人氏がITプラットフォーム製品とネットワーク製品を提供するプラットフォーム事業の成長戦略に関する説明を行った。同社は2012年度には売上高4,100億円と海外売上の比率29%の達成を目指す。
同氏は、プラットフォーム事業の状況について、「売上高はサーバ統合による仮想化の進展による増収の見込みで、営業利益はハードウェアを中心に低価格の傾向が強いが費用改善効と売上増によって増益の見込み」と説明した。
同事業では「ユニファイドコミュニケーション事業」「クラウド共通基盤事業」「サーバ事業」の3事業を重点領域として拡大を図る。具体的には、ITプラットフォームとネットワークをそれぞれクラウド指向のプラットフォームの基盤として拡充する一方で、サーバ事業をグローバルへ展開し、ユニファイドコミュニケーション事業を拡大していく。昨年4月、ITプラットフォームとネットワークの事業統合と組織再編を行うことで、効率化を実現したという。
同氏は、同社のユニファイドコミュニケーションについて、「音声とオフィスソリューションを組み合わせている点が特徴」と説明した。同社のネットワーク事業は売上の50%が海外であるため、グローバルでの販売網を生かし、事業を拡大していく。「今年1月に新興国向けにリリースした、小容量コミュニケーションサーバ『UNIVERGE SL1000』は十分戦える製品」と、同氏は自信を見せる。
クラウド共通基盤事業では、クラウドコンピューティング向けプラットフォーム「REAL IT PLATFORM G2」の強化、OpenFlowを活用した仮想化対応ネットワーク基盤の開発に注力する。
REAL IT PLATFORM G2においては、サービス実行基盤でマルチテナント処理と高速データ処理を強化し、インフラでリソースの効率利用と仮想化対応ネットワークを強化し、システムサービス管理でクラウド運用とクラウド間連携を強化する。
OpenFlowは米スタンフォード大学が中心となって提唱しているネットワーク制御技術で、ネットワークの通信単位をフローとして定義し、フロー単位できめ細かな経路制御や品質確保などが可能。同社はOpenFlowの国内外で実証実験を行っており、今春にはデータセンター市場に向け、アラクサラネットワークスと共同開発しているOpenFlowを用いたネットワーク機器をリリースする予定だ。
サーバ事業において、製品面ではデータセンター向け製品で培ったエコに関する技術を追求する。同氏は、「今日のサーバは環境が考慮されていないと生き残れない。よって、すべてのサーバ製品においてエコ機能を強化していく」と述べた。販売面では、現在は国内での販売が中心のところ、ネットワーク事業のグローバル販売網を活用するとともに、新興国などの新規チャネルを開拓することで、グローバル・サプライヤーへのステップを図る。
同氏は、先日PC事業における提携を発表したレノボについて言及し、「具体的な内容はまだ決まっていないが、レノボと共同でサーバを販売することも視野に入れている。レノボもサーバを販売しているが、台数は少なくボリュームゾーンが中心であり、エコサーバやFTサーバなどラインアップが豊富な当社とは補完関係にある。まずは、中国を中心に販売を行っていく予定」と説明した。
また、ハードウェアの競争力を強化するため、サーバをベースとして専用設計されているハードウェアの共通化を図る。これにより、エコや仮想化機能といった最新技術の製品への搭載が早まるとともに、開発・生産・保守コストの削減を実現するという。「コモン・プラットフォームはサーバをはじめ、ストレージ、PBX、ATMなど、さまざまな機器に搭載する。同じ部品を用いることで、現状の2割程度のコストを削減できる」と同氏。
2010年度の売上高は3,850億円、営業利益は110億円の見込みだが、2012年度には売上高4,100億円、営業利益は200億円を狙う。これを実現すべく、同社はハードウェアの共通化や海外の活用による原価削減を行うことで収益性の向上を図る。