MathWorksの日本法人であるMathWorks Japanは9月14日、MATLABおよびSimulinkを用いた信号処理および通信システム設計のための新機能「SimRF」を発表した。

SimRFなど信号処理に向けたMATLAB/Simulinkの各種新機能の位置づけ

同機能を用いることで、システム設計者は従来からのRFサブシステムモデルとサーキットエンベローブ、およびハーモニックバランス法を用ることで、デジタルおよびアナログのベースバンドやRFサブシステムを用いる無線システムにおける開発の初期段階での現実的なシミュレーションができるようになり、従来Simulinkで必用であった動作を記述したモデルなどを作ることなく、無線通信システムを設計ならびに検証することが可能となるほか、複数のRF信号による解析が可能となるという。

SimRFの各種コンポーネントとモデル作成の選択肢。アンプとミキサーのIP2は従来サポートされていなかったもので、今回初めてサポートされた

また、SimulinkモデルからVHDLおよびVerilogを自動的に生成するツール「Simulink HDL Coder」を2.0にバージョンアップ。同2.0では、モデル上へのクリティカルパスのハイライト表示、およびハードウェアのリソースの使用状況の推定により、設計の繰り返し作業を効率化することが可能となったほか、シリアル化、リソース共有およびパイプライン処理などの最適化のサポートや、XilinxおよびAlteraのFPGA上の合成と実装を自動化するFPGAワークフローアドバイザーも搭載されている。

これにより、自動生成されたHDLにおけるエリアとスピード配分の最適化が可能となるほか、CまたはHDLコードでのハンドコーディングによる設計作業を軽減することが可能となるという。

FPGAの合成ツールとの統合なども行われており、ハードウェア設計を容易に行うことが可能となる

さらに、「Communications Blockset」「Signal Processing Blockset」「Video and Image Processing Blockset」などのストリーミング処理アルゴリズムも強化。これにより、標準的なインタフェースでオーディオ、ビデオ、およびその他のストリーミングデータをMATLABで効率的に処理することができるような250以上のアルゴリズムが提供されることとなり、システム設計者はこれを活用して開発の容易化ができるようになるほか、これらのアルゴリズムはSystem objects(アルゴリズム設計と再利用を円滑化するMATLABオブジェクトの新クラス)として提供され、生成されたMATLABプログラムは、直接Simulinkモデルでシステム設計、シミュレーション、解析に使用することが可能となっているため、複雑なアルゴリズムもシンプルに設計でき、他の系統のアルゴリズムと組み合わせてシステムレベルのモデルを作る手間を軽減することが可能となる。

System objectsを用いると、オブジェクトとして定義することが可能となる

このため、例えば従来、MATLABでストリーミング処理を行う場合、ファイル全体をメモリに取り込んで、アルゴリズムを適用していっていたため、巨大なファイルの場合は巨大なメモリが必用となっていたが、System objectsを用いると、フレーム単位でロードを行い、次のフレームに移る前に処理する逐次処理が行われるため、フレーム単位でのメモリを確保するだけで済み、大容量メモリを不要にすることができるようになる。

加えて、同社のコード生成製品を用いて、Eclipse統合開発環境(IDE)、Embedded LinuxおよびARM Cortex-A8のターゲット、リアルタイムパフォーマンス解析、ならびにCコードの検証を自動化できるようになったほか、「EDA Simulator Link」ではバーチャルプラットフォーム環境で検証を行うためのSystem C TLM-2.0コンポーネントの生成がサポートされている。

ターゲットに特化したCコードの生成が可能なほか、カスタムIPの検証などが可能となった