産業技術総合研究所(産総研)と大阪大学は、Ru電極とダイヤモンドを組み合わせたパワーデバイス用ダイオード整流素子を開発、スイッチング性能の測定を行い、高速・低逆回復電流動作を確認したことを発表した。

半導体としてのダイヤモンドは、絶縁破壊電界や電荷移動度などに優れた特性を持つため、高耐電圧・低損失・高速応答の半導体デバイス、特に電力を制御するパワー半導体デバイスとしての応用が期待されている。

試作されたダイオード整流素子の外観(左)と模式図(右)

ダイオード整流素子はパワーデバイスの基本部品であり、今回、ダイヤモンド半導体と以前に産総研で開発したRuショットキー電極を組み合わせたショットキー型のダイヤモンドダイオードを作製。同ダイオードは、ダイヤモンドやRu電極の特性から、高温動作、冷却不要、大電流密度動作などを可能としており、電極サイズが小さいため、ダイオード7個をワイヤで並列接続し、高温動作もできるように高温に耐える封止材を用いて封止。駆動用トランジスタには市販のSi MOSFETを用い、ダイオード整流素子を作製した。

測定に用いた回路図

スイッチング特性は、デバイスの温度変化の影響を受けないダブルパルス法により計測。その結果、電流値に依存しないユニポーラダイオードの特徴が示された。0.01μsのスイッチングが確認されたほか、測定回路の寄生インダクタンスと高速スイッチング動作の高di/dtにのみに依存した逆回復電流は40A/cm2と小さく、エネルギー損失が抑えられることも判明。結果として同ダイオードが常時安定して高速動作することがわかった。

さまざまな電流値(赤~茶色の線)に対しても安定なスイッチング特性

また、温度依存性を測定した結果では、回復電流に温度依存性が無く、またスイッチング速度も温度変化していないことが判明。200℃まで安定した動作を示し、冷却しなくても良好な動作をすることがわかったという。

スイッチング特性の温度依存性

なお、同成果は、9月10日の電子情報通信学会の英文学術誌「Electronics Express」に掲載されたほか、9月13日から長崎で開催される応用物理学会にて15日に発表される予定となっている。