ルネサス エレクトロニクスは9月2日、リアルタイム制御とDSP並みの信号処理性能の両立を実現することが可能となる32ビットCPUコア「V850E2H」を開発したことを発表した。

同コアは、信号処理性能強化のため、4個のデータに対する演算処理を1命令で実行できるSIMD(Single instruction multiple data)対応の演算器(コプロセッサ)を内蔵、SIMD命令、CPUと並列に動作するSIMD演算器およびSIMD演算器専用ベクトルレジスタ(64ビット)を追加。従来のV850E2Mと比べ信号処理拡張命令を実行する専用パイプライン、ループ命令などを高速に実行するコンパクトな分岐先予測器を追加で搭載しているため、従来のDSPに匹敵する信号処理とリアルタイムシステム制御を、DSPを外付けすることなくマイコンのみで実行することが可能だ。

また、C言語で記述したフィルタプログラムを従来のCPUコアで実行した場合で比較すると、同コアでは、2/3のプログラムサイズで、実行時間を約1/12へと短縮することが可能で、コードサイズ当たりの性能を向上させることに成功しているほか、ローカル分岐履歴に基づく分岐予測、ループ最適化命令、長距離条件分岐などの基本機能を強化したことで、従来CPUコアと比べて、信号処理を含まないアプリケーションプログラムにおいても約5~12%の性能向上を達成している。

さらに、基本命令と信号処理拡張命令がCPU内部のパイプラインで実行されるため、すべての命令で割り込みを受け付けることが可能となっている。

加えて、DSPの外付けが不要となることから、制御プログラムと信号処理プログラムのいずれもCPU向けプログラムの開発環境で設計・検証が可能。従来のCPUとDSPそれぞれ個別の開発環境で設計・検証していた場合に比べ、協調検証する工数の削減ができるほか、従来CPUであるV850E2Mと基本命令セットのオブジェクトレベルの互換性を保証。V850E2Mで搭載されていたIEEE754規格に準拠した浮動小数点演算器を搭載することも可能となっている。

なお、ルネサスでは、同コアが高い制御性と信号処理性能を両立するとともに、FA機器の制震処理、車載レーダーや自動車のエンジンの燃料効率を監視するノッキングセンサなどの車載制御ユニットといった、高度な解析アルゴリズムを必要とする制御システムのプログラム開発に貢献できる技術と位置づけており、今後、マイコンへの適用を図って新しいソリューションとして提供していく計画としている。