日立製作所は6月18日、人間共生ロボット「EMIEW2」のオフィスなどでの実用性を向上するため、配線や床面の段差を乗り越える走行機能と、さまざまな雑音の中でも人の声を正しく認識できる音声認識機能を開発したことを発表した。今回の成果をもとに、オフィスや病院での案内・巡回監視等のサービスを行う人間共生ロボットの実用化に向けた開発を加速していく方針。
EMIEW2は、同社が2007年に開発した人の早足とほぼ同じ時速6kmで2輪の自律走行を行う、小型・軽量ロボット。オフィスや病院などの実際の環境下で安定的に稼動させるためには、配線やマット・敷居などの段差や、音楽や人の話し声をはじめとするさまざまな雑音など、予期せぬ障害やオフィス特有の環境を把握し、適切に対処することが課題となっていたが、同社ではオフィスなどでの実用性向上のため、走行機能を強化するとともに、さまざまな雑音の中でも人の声を正しく認識できる音声認識機能を新たに開発、搭載した。
具体的には、段差や配線が這う床面でも安定して走行ができるように足回りにアクティブサスペンションと空転制御技術を組み込んだ。アクティブサスペンションは、床面の段差に乗り上げた際の衝撃を柔軟なバネで吸収し、バネの変形に伴うロボットの姿勢の傾きをアクチュエータの伸縮で補正することで、安定した姿勢を維持する仕組み。また空転制御技術は、段差を乗り越える際に浮いた車輪が過剰空転するのを抑制し、着地後にも安定した走行を継続する技術。この2つの技術により、予期せぬ段差や配線を乗り越え安定して走行することが可能となった。
さらに、雑音の中でも人の声を正しく認識できるように、現行のEMIEW2で採用している、左右方向の音の聞き分け機能に、新たに上下方向を加え、立体的な聞き分け機能に進化させた。頭部に搭載した14本のマイクを用いて、高い精度で雑音を除去するとともに、ロボット内部で発生する雑音専用の除去機能により、音声認識性能を向上させており、構内放送などのさまざまな雑音の中でも、人の声を正しく認識することが可能になった。
なお、日立では今後、実証試験を通じ実用化に向けたデータを蓄積し、人と安全に共存しながら、案内サービスや巡回監視サービスを安定的に提供する、人間共生ロボットとしての応用を目指すとしている。