シャープは6月7日、マルチディスプレイに対応した60V型デジタルサイネージ用LCD「PN-V601」を発表した。同製品は、同社がこれまで培ってきたLCD技術をASV-LCDに活用することで、マルチディスプレイ構成時に隣接するディスプレイ間のフレーム幅を世界最狭クラスとなる6.5mmを実現、つなぎ目を目立たなくさせることに成功している。

PN-V601を組み合わせて展示された正面30枚(350型、3,200万画素相当)、床24枚(2,400万画素相当)のマルチディスプレイシステム(正面と床に別々の画像を表示することも可能)

シャープ 常務執行役員 国内営業統括 兼 国内営業本部長の岡田守行氏

同社常務執行役員 国内営業統括 兼 国内営業本部長の岡田守行氏は、発表会場に展示された表面30面、床24面の合計約5,600万画素のマルチディスプレイシステムを「i3Wall」と紹介、「3つのi(Infomation、Intelligent、Imaging)を併せ持ったLCDをタイルのように配置することで、インテリジェントな建材としての活用も可能。場所やカスタマのニーズに合わせた最適なソリューションを構築することが可能」とし、「数年以内に(2003年から進めてきた)デジタルサイネージ事業を1,000億円規模へと成長させたい」と意気込みを語った。

3つの意味を持つ「i」

PN-V601のパネル性能は、1366×768画素で約1677万色表示、最大輝度は700cd/m2となっており、同社の最新技術であるUV2Aではなく、従来のASVを採用したことについて同社執行役員ビジネスソリューション事業本部長の中山藤一氏は、「当然フルHD化は目標だが、今回は1枚のパネルとしてではなく、複数枚をつなぎ合わせたときに表示画像などのバランスを考えた構成と狭い額縁を実現することを優先した」と説明、将来的なソリューションとしては大画面として見た場合の他のサイズも検討していくとした。

シャープ 執行役員ビジネスソリューション事業本部長の中山藤一氏

また、バックライトには780個のLEDを採用。これにより、従来の冷陰極蛍光ランプ(CCFL)ではパネル中央に比べてパネルの端部では明るさが50%ほどロスする傾向があったが、これをLEDバックライトとすることで、全体の均一性80%以上を達成したとしたほか、天井や床などにも配置できるようになり、建築材料の代替として使うことが可能になることを強調した。

狭額化により視認性が向上

LEDバックライトにより輝度ムラの低減を実現

各種FPDによる大型スクリーンのメリット比較

PN-V601を活用したマルチディスプレイソリューションは、パネル9枚程度の中小規模については、サイネージ表示システム「e-Signage」を用意。それ以上の枚数については、「マルチディスプレイウォールシステム」と呼ぶシステムを提供するほか、同システムの提供に併せて超解像技術をソフトウェア的に行い、画質向上を図るオプションをe-Signageなど向けに用意する計画。

ディスプレイ単体ではなく、ソリューションとして売った後も含めたビジネスを計画している。オプションとして超解像技術の提供も予定

同製品およびシステムの販売は2010年8月31日からを予定しており、価格はシステム構成などにより異なるためオープンとなっているが、「例として今回の54枚構成のシステムであれば5,000万円程度」としている。月産規模は1,500台を予定している。