東京 秋葉原のUDXギャラリーにて、オートデスクの3DCGツール「Autodesk 3ds Max 2011」と、3DCG統合ツール「Autodesk 3ds Max Entertainment Creation Suite 2011」に関するセミナーが行われた。

「3ds Max 2011」の画面。進化の途中で名称は変わっているが、「3ds Max」の歴史は今年で20年になるとのこと

「3ds Max 2011」のデモンストレーションに入る前に、ふたつのバージョンの「3ds Max」の違いが紹介された。3ds Maxは、一般的に知られている3ds Max 2011で、こちらは映像やゲームなどの開発に使われるもの。そしてふたつめの「3ds Max Design 2011」は、主に建築やデザイン用途に使われる。こちらには、SDKが付属しない代わりに、リアルなライティングを表現できる「Exposure照明分析」の機能が備わっているとのこと。なお、収録される機能の90%以上は同じで、価格も共に51万5,550円となっている。

「3ds Max 2011」と「3ds Max Design 2011」の簡単な機能比較表

「3ds Max 2011」の進化したインタフェース

3ds Max 2011の機能紹介は、進化したインタフェースの解説から始まった。「作業者のマウス移動量をできるかぎり減らしたかった」と紹介されたのは、ポリゴンの編集時にフローティングUIが現れる機能。従来、ポリゴンの詳細編集を行なう際にはウインドーをポップアップさせ、そのなかで数値入力を行っていたが、本バージョンからは小さなUIがカーソル付近に表示される。このUIを操作すると、作業画面のポリゴンがリアルタイムに編集される。直感的で使いやすそうなインタフェースだ。

クワッドメニューからコマンドを選択するとき、「詳細」を選ぶとカーソル付近に新しいフローティングUIが現われる

どのコマンドを選んだかによって、表示されるインタフェースの形状は異なる。写真はスプラインに沿ってポリゴンを押し出しているところ

改良された「リボンインタフェース」

次に紹介されたのは前バージョンの3ds Max 2010で登場した「リボンインタフェース」。これは簡単に説明すると、メニューバーの下部に現れるショートカットバーのようなものだ。ユーザーから「重いくて使いにくい」という声があり改良されたとのこと。3ds Max 2011で進化したリボンインタフェースは軽快になっただけでなく、ユーザーがオリジナルのメニューを作成可能。すべての機能のなかから使用頻度の高い機能だけを選んで登録できるため、うまく使いこなせば大幅な生産性アップに繋がりそうだ。

ショートカットパネルの作成は、マウスクリックのみで完了する

「スレート マテリアル エディタ」とは?

歴史が長く、さまざまな進化を遂げてきている3ds Maxシリーズだが、唯一変化していなかった機能が「マテリアルエディタ」。これが最新バージョンでは最近流行りの「ノードベース」のエディタに進化した。「スレート マテリアル エディタ」と名付けられた機能は、各シェーダをワイヤでつなげてマテリアルを作成する。従来のものに比べて視覚的にマテリアルを把握しやすかったり、同じテクスチャを複数のシェーダで使用する際に威力を発揮する。

従来のマテリアルエディターは階層構造で全体像を把握しにくかったが、最新版ではマテリアル全体を俯瞰して見られる

ひとつのマテリアルを拡大したところ。1枚のテクスチャーを2カ所で使用するため、2本のワイヤーが伸びているのがわかる

「スレート マテリアル エディタ」は、従来の形式のマテリアルエディターに戻すことも可能

「オブジェクトペイント」機能

セミナーでは、恐竜のボディに羽を生やすというデモが行われた。ここで紹介されたのは「オブジェクトペイント」機能。これは、小さなあるオブジェクトを、他のオブジェクトの表面に大量に敷き詰めるときに有効。マウスで恐竜の表面をなぞっていくと、次々と羽が貼り付けられていた。もちろん、貼り付けた羽の角度はあとから調整可能。

読み込んだ恐竜のオブジェクトは、皮膚がツルッとした状態

恐竜の皮膚を「オブジェクトペイント」でなぞると、大量の羽が生えてきた

無機物にも対応した「Caractor Animation Tool」

3ds Maxシリーズの人気機能のひとつ「CAT」(Caractor Animation Tool)。これはキャラクターのリグ(複数のボーンで作った構造)を自動生成したり、動きを簡単に制御できる機能。従来からの機能に加えて、本バージョンのCATは3ds Max 2011に完全統合されて、ヘルプも完全日本語化された。さらに、興味深い変更点は、キャラクターだけでなく自動車とバイク、船のリグも扱えるようになったというところ。これには「Craft Director Studio」というプラグインを使う。上位バージョンは有料だが、標準で搭載している機能でも扱うことができる。自動車のリグにはサスペンションも含まれており、つねにタイヤと路面が接地するようにボーンが動く。また、カーブのときは内輪差・外輪差も自動的に計算してくれる。ユニークなのが、アニメーション登録方法。Craft Director Studioは乗り物オブジェクトの動きをキーボードやゲームパッド、ホイールコントローラーで制御できるため、まるでゲームをプレーするかのようにモーションの設定を行なえる。面倒な「モーション付け」の作業を簡単に行えるインタフェースなのだ。

CATで制御された多足歩行生物。ヤドカリのようなキャラクターが柱を登っていくアニメーションが作成されていた

CATではボーンの上に盛られている筋肉の動きまでシミュレート可能

キーボードで操作した車の動きが、そのままモーションとして記録される

この他にも、グループ制作のワークフロー紹介や、GPUレンダリングを可能にした「Quicksilverレンダラー」の紹介など、数多くの新機能の紹介が行なわれた。3ds Max 2011の紹介後は、アニメーション作成ツール「MotionBuilder 2011」、3Dモデル作成ツール「Mudbox 2011」、映像合成ツール「Composite」などが紹介された。この様子は続報でお伝えする予定。