属性によって分類されたコンテンツの集合管理とプレゼンテーション
Microsoftの研究部門である「Live Labs」が『Pivot』というアプリケーションを公開しています。.NET Framework (WPF) と、同部門が開発した「Seadragon」と呼ばれる技術を応用した、多数のコンテンツをコレクションとしてまとめ、コンテンツの属性によって動的に並べ替えるアプリケーションです。大量のデータの関係を視覚的にまとめることができます。
必須動作環境はAeroが有効になっているWindows VistaまたはWindows 7で、2GHz以上のプロセッサと2GB以上のメモリ、256MB以上のビデオメモリとされています。加えて.NET Framework 3.5 SP1とInternet Explorer 8がインストールされている必要があります。新しいデスクトップPC環境であれば問題ありませんが、グラフィック性能の低いノートPCやネットブック環境での動作は難しいでしょう。
Pivotで利用されているSeadragonは、巨大な画像を複数の解像度に分解し、伸縮レベルに応じて適切な解像度の画像を読み込んで描画する仕組みを提供します。これによって地図サービスの広域地図から特定地域を拡大するときのような、画面遷移を発生させないシームレスな画像の伸縮が可能になります。単純なビットマップの伸縮ではないため、拡大時でも高品質な画像を維持できます。
この仕組みはSilverlight 2が登場した当時には「Deep Zoom」として注目されましたが、まだ実用的なアプリケーションでの応用例は少ないため、MicrosoftにとってPivotはドッグフーディングとしても意味のある作品でしょう。
このように、属性情報を持った大量のコンテンツをコレクションとしてまとめて描画し、ユーザーが属性情報から自由に項目を並べ替えられる点が特徴です。項目を選択してピックアップすると、画面右に詳細情報が表示されます。とてもスムーズに大量のコンテンツの中から目的のデータを絞り込み、閲覧できます。
コレクションは「Deep Zoom Composer」などで作られたDeep Zoomフォーマットのファイルと、コレクション内のコンテンツの情報が記述されたXMLファイルで構成されています。よって、事前に用意されているコレクションだけではなく、新しいコレクションを作成して公開することも可能です。コレクションを作成するためのファイルフォーマットや詳細は公式ページの「Developer Info」を参照してください。
また、Pivotの内部ではIEエンジン(Trident)が組み込まれているため、通常のWebページも閲覧できます。加えて、履歴やお気に入り、ユーザーが入力したタグ情報などから、コレクションと同じようにWebページのサムネイルを並べられます。
Webブラウザ版に期待
Pivotがデスクトップアプリケーションであることは大きな足枷です。高品質なユーザー体験を提供するために、アニメーションやSeadragonによる描画を駆使しているため、ブラウザで動作させるのは困難だったのかもしれません。しかし、誰もがブラウザの中にPivotがあるべきだと思うことでしょう。PivotをインストールしてくれるのはMicrosoftの技術に興味を持っている一部の人だけであり、Pivot用のコレクションを作っても閲覧してもらうには敷居が高すぎます。しかし、ブラウザ内でPivotが動作すれば、ページにアクセスするだけでPivotのコレクションを閲覧できるようになります。
公式ページの説明によれば、2010年夏にWebサイトに組み込み可能なSilverlight 4用のPivotコントロールを提供する予定です。先月ラスベガスで行われたMicrosoftのイベント「MIX10」においても、Scott Guthrie氏が初日のキーノートでPivotコントロールを紹介していました。
PivotコレクションをWebサイトに統合できれば、コストをかけずに大量のコンテンツを活用した高品質なユーザー体験を提供できるチャンスとなるでしょう。企業であれば商品のカタログなどに応用できそうです。また、Web上でタグを共有したり、Pivot用のコレクションを自動生成するサービスを構築するといった応用も考えられます。