NXP Semiconductorsは2月17日、都内でRFIDを用いた市場の動向および自社の供給するRFID製品の特長に関する説明会を実施した。

NXP Semiconductors アイデンティフィケーション タグ&製品認証事業担当 マーケティング・マネージャーのBrend Tetyzka氏

同社アイデンティフィケーション タグ&製品認証事業担当 マーケティング・マネージャーのBrend Tetyzka氏は、「RFIDはすでに各分野に浸透している。例えば公共交通機関などにおいては、我々のMYFARE ICが多く採用されているし、ソニーと共同開発したNFC(near field communication)も全世界150以上で実証実験が進行しているほか、eパスポートや非接触型EMVバンキングソリューション(銀行カード)などでも活用が進んでいる」と、幅広い分野でRFIDの活用が進んでいることを強調する。

RFIDを活用する場合、ホスト側には管理用のシステムとコントローラと無線部を搭載したリーダがあればよい。クライアント側にはICチップとアンテナさえあれば良く、ホスト側からの電力による電磁力のカップリングにより、間に遮蔽物があっても、データの送受信が可能となっているのが特長である。

バーコードと比べた場合「RFIDは複数のラベルを一気に読み取ったり、汚れていても認識することが可能。また、セキュリティのアルゴリズムを持たせることで、偽者との判別が可能となるほか、在庫管理などを自動化することも可能だ」(同)とその優位性を述べる。

同社が提供する主なRFIDは周波数別に「HITAG」「ICODE」「UCODE」という製品シリーズで展開されている。いずれもISOで標準化されており、そうした標準仕様に基づいたカスタマイズなどに対応している。

NXPのRFID製品のラインナップ

ICODEは13.56MHz帯(HF帯)を活用。水や金属などの環境でも使用が可能で、例えば日本でも三越デパートにおける在庫管理や、自動車メーカーの工場において製造管理と品質管理などに用いられており、全世界で2009年末までに累計10億個の出荷実績を達成したとする。

また、次世代ICODE「ICODE SLIx」の開発も進んでおり、より低消費電力で遠距離での読み取りに対応できるようになるほか、低Q値によるさらなる複数枚読み取りへの対応が図られており、「標準のリーダ仕様においてテストした場合、従来品比で約20%の読み取り性能向上が見込める」(同)とし、重ね読み取りが強化されることから、そうした要求の強い分野に対して、市場の開拓を進めていくという。

図書館での利用イメージ(RFIDリーダーにタグを入れた本を近づけると、その情報に基づきリーダーが本のタイトルなどを読み取る。一番右の画像は本に入っているRFIDそのものの写真)

分かりづらいが、左手に持っているのが次世代ICODEであるSLIxのサンプル基板、右が現行のSLIで、手がある部分が机に置かれたRFIDリーダーの認識限界距離となっている

一方のUCODEは、840~960MHz帯の周波数を用いるRFIDで、最大10mの読み取りが可能となっている。現行の「UCODE G2X」シリーズは「G2XM」と「G2XL」の2グループが用意されており、G2XMではユーザーメモリ512ビットを実現したほか、EPC(Electric Product Code)領域に240ビット、TID(Tag Identifier)領域は64ビットに加え、独自の32ビットシリアルコードが追加されている。

EPCはバーコードの管理団体であるGS1が、バーコードの次の認証コードとして検討しているコードを埋め込む領域で、将来的にはRFIDがバーコードの位置に取って代わることになるという。

また、パスワードで保護することが可能な独自のカスタムコマンドにも対応しており、万引き防止(EAS)や不正な読み取り防止といった機能を付け加えることも可能となっている。

カスタムコマンドにより、パスワードで認証済みのリーダーでなければ読み取れないようにしたりすることができる

NXP Semiconductors アイデンティフィケーション タグ&製品認証事業担当 プロダクト・マネージャーのMario Steiner氏

同RFIDはその読み取り可能距離の長さから、「日本では小学館の物流における雑誌識別のために活用されているほか、海外ではアパレルショップにおいて在庫管理と顧客満足度の向上に活用したり、都市部の車両通行のトラッキングなどに活用されている」(同社アイデンティフィケーション タグ&製品認証事業担当 プロダクト・マネージャーのMario Steiner氏)という。

RFIDは、メモリ容量や転送距離などの関連から、その使用領域は拡大しているという。すでに図書館では全世界で2,500~3,500程度の図書館にて各書物にタグが取り付けられ管理が行われており、「日本でも多くの図書館で活用されており、例えば東京都で300万個のタグが、静岡県で200万個のタグが活用されているなど、各都道府県で導入が進められている」(同社日本法人であるNXPセミコンダクターズ ジャパン アイデンティフィケーション事業部 マーケティングの巴祥平氏)とし、普及期に入っている分野があるとするほか、家電などでは、プリント基板内にアンテナとICチップを入れることで、製造から修理、廃棄までをトレースすることができるようしようと、導入が進んできているとする。

RFIDの市場別の導入割合。右上に行くほど市場規模が大きく、普及も進んでいる。だだし、国内と海外では若干毛色が異なり、この図では普及の部分に「Animal ID」があるが、日本では家畜のトレースやペット用IDといったことはまだそれほど盛んになっていない

また、新たな分野として、医療関連での活用や小売店での商品管理、プロモーションへの展開などが検討されており、「RFIDを活用することで、真贋の判定や危険物の確認、生ものの管理など、これまで難しかった付加価値の向上が可能となることを打ち出していく」(同)とすることで、幅広い帯域でそれぞれの用途に応じたリーダーとタグの両方を提供していくことで、カスタマやエンドユーザーの満足度などの向上につなげていきたいとした。

プリント基板にRFIDとアンテナを形成したもの。小さくてわかりづらいが左写真のNXPのロゴの左側の小さな黒い長方体のものがICチップで、そこから伸びる黒い線がアンテナ(右写真は裏返したもので、右端にある黒いループ状のものがアンテナ。パッシブなので、基板が壊れて電力が供給されなくても稼働できる。日本では家電などに向け、こうした分野に注力していきたいとのこと)