プラズマクラスターイオン関連製品が順調に数字を伸ばすなど、黒字体質に復帰しつつあるシャープ(写真は大阪本社)

シャープが発表した2009年度第3四半期連結決算は、売上高が前年同期の7,351億円から、ほぼ前年並みとなる7,353億円。営業損益は前年同期の158億円の赤字から、368億円改善して210億円の黒字。経常損益は334億円改善し175億円の黒字、当期純損益は749億円改善し、91億円と黒字転換した。

プラズマクラスターイオンを搭載した空気清浄機やイオン発生機などが好調だった健康/環境機器事業が成長。さらに、エコポイントが追い風となった国内の液晶テレビ事業が好調だったという。

また、構造改革が計画を上回る形で進展。第3四半期までの削減実績は1,790億円となり、年間2,000億円の目標に対して90%の進捗率となった。内訳は、人件費が進捗率94%となる425億円、減価償却費が93%となる326億円、変動費が88%となる881億円といずれも高い進捗率となっており、これが利益確保に直結した。

部門別では、エレクトロニクス機器の売上高が前年同期比2.1%増の5,141億円。営業利益は325億円回復の140億円。そのうち、AV/通信機器は売上高が0.9%減の3,810億円となったものの、営業利益は268億円回復し、49億円の黒字。液晶テレビやBlu-rayレコーダー、携帯電話が好調だった。

液晶テレビは、売上高が2.4%減の1,999億円となったが、営業利益は第2四半期に続いて黒字。販売台数は5.3%増の304万台となった。

国内はエコポイント効果もあり、前年同期比54%増の170万台。海外は26%減の134万台。欧米市場においては大幅な落ち込みを見せているが、中国市場や、アジアなどを含むその他地域では大幅な伸びを見せているという。

欧米市場に関しては、価格下落が激しいこともあり、同社では収益性を重視して、積極的な販売台数の増加には踏み込まなかったことが出荷台数の減少につながっているが、その一方で、国内を中心に、LED AQUOSやBlu-ray搭載AQUOSなどが順調に売れ行きを拡大しており、「2010年度には、国内出荷の5割以上をLED AQUOSにする」と意欲を見せている。

なお、2009年度通期の液晶テレビの出荷計画である1,000万台についてはそのままとしているが、第4四半期には対前年同期比10%増となる256万台の出荷が必要となっており、第2四半期の12.3%減の239万台、第3四半期の5.3%増の304万台と比べて高い成長率が必要となる。また、第4四半期のテレビ事業は黒字を見込んでいるが、第1四半期の赤字分を吸収できず、通期は赤字見通しとしている。

3Dテレビ事業については、「準備は進めている」とするに留まり、具体的な計画については言及しなかった。

携帯電話事業は、5.6%増の1,218億円、出荷台数は16.1%増の290万台。国内市場が停滞ぎみのなかでもシャープが得意とする高解像度カメラ付き携帯電話での優位性や、太陽電池付き携帯電話などの独自性のある製品が人気を博し、さらに、中国市場向けの販売台数が伸びた。同社では、2009年度に1,070万台の年間出荷計画を打ち出しているが、中国市場向けの出荷規模は、100万台以上200万台未満といったところに落ち着きそうだという。

健康/環境機器の売上高は前年同期比37.7%増の675億円。営業利益は62億円増の67億円となった。空気清浄機やイオン発生機など、同社独自のプラズマクラスターイオンを搭載した製品が好調で、営業利益率は9.9%と垂直統合の強みが生きている。

また、情報機器の売上高は前年同期比6.7%減の655億円、営業利益は18.5%減の22億円となった。企業の設備投資の抑制で、複写機事業などが厳しい状況になったという。

一方、電子部品などの売上高は2.3%減の3,449億円、営業利益は193.3%増の44億円。そのうち、液晶は3.4%減の2,102億円、営業利益は81.2%減の10億円。

液晶は、2009年10月に稼働したグリーンフロント堺の立ち上げ費用が加わったほか、パネル材料価格の高止まりが影響して大幅な減益となった。また、主に携帯電話やゲーム機向けに供給している中小型液晶の販売減が影響した。だが、第4四半期には、立ち上げ費用がなくなること、さらに部材の手当もついていること、そして、新工場稼働によりパネル生産も効率化が図られるなど、利益幅を拡大できるものと見込んでいる。なお、液晶パネルの外販比率は50%としている。

太陽電池は売上高が52.6%増の577億円、営業利益は50億円増の14億円。助成制度に加え、2009年11月からの余剰電力の買い取り制度が、住宅用太陽電池の需要を後押ししている。

その他電子デバイスは、売上高が6.3%増の770億円、営業利益は24億円増加の20億円となった。

今回の決算を見る限り、着実に黒字化に向けた体質改善が進んでいると評価することができるが、その一方で、価格競争が激しいテレビ事業において、いかに収益を確保するかが課題といえよう。来期の成長戦略に実行に向けて、この第4四半期の構造改革の総仕上げが注目される。