Analog Devices(ADI)は1月19日、同者のプロセッサ「Blackfin」の産業機器の統合デジタル信号処理/制御処理アプリケーション向けとして「ADSP-BF50x」ファミリを製品化したことを発表した。

産業用機器向けBlackfin「ADSP-BF50xファミリ」のパッケージ外観

アナログ・デバイセズのDSPテクノロジーグループ シニアマネージャーである藤川博之氏

同ファミリについて、同社日本法人アナログ・デバイセズのDSPテクノロジーグループ シニアマネージャーである藤川博之氏は、「世界規模でエネルギーの効率化や電力管理に対する要求が高まってきており、インフラストラクチャのあらゆるレベルにおいて、新たな設計やアプリケーションが生み出されつつある」という動きに注目、特に「モータ制御」や太陽光発電などで用いられる「インバータ」、事業継続を実現する「インテリジェントUPS」の3つの分野をターゲットとして開発されたものと説明する。

こうした分野に適応させるため、同ファミリは、最大400MHzの動作周波数に2つの乗算器‐累算器(MAC)を搭載しており、信号処理速度の集約尺度を計測するBDTIのベンチマークであるBDTIsimMark2000において、固定小数点プロセッサの1ドルあたりの処理速度が43~498と、競合他社の製品と比べても、高いものとなっている。

Blackfinシリーズの中におけるBF50xファミリの位置づけ(バリューとは単に価格が安いとの意味ではなく、システムのトータルコストをいかに下げているかの指標とのこと。なお、BF504にオートモーティブ対応製品との記述があるが、社内では検討段階にあるという)

BF50xファミリと競合製品のBDTIベンチマーク結果比較

また、オプションとして、4MBの同期パラレルフラッシュメモリと逐次比較レジスタ(SAR)A/Dコンバータ(ADC)を搭載したモデルも用意。ADCはデュアルで、12ビットながら、有効ビット数(ENOB)は一般的な10前後を超す11.5を実現しているほか、ADC制御モジュール(ACM)も内蔵。これにより、ADCのサンプリングタイミングを調整することが可能となり、複数のチャネル(外部ADC含む)を同時にサンプリングすることが可能となった。

BF50xファミリのブロック図

このENOBの値について、藤川氏は「いきなり新しい技術を入れて実現した訳ではない。単体のADCで実現していた技術であり、それをいかにBlackfinに取り込むかがポイントであったが、これまでのアナログ半導体の知見を生かすことでそれを実現した」と説明する。

さらに、産業用機器に対応させるためにCANや3相PWM(2個)、SDIOなどのリムーバブル・ストレージ・インタフェースなどのペリフェラルも装備。これにより、さまざまなアプリケーションへの適用が可能となっている。

パッケージはADCなしの「BF504」およびフラッシュ内蔵品の「BF504F」が12mm×12mm、88ピン、0.5mmピッチのLFCSPとなっているほか、フラッシュおよびADC内蔵品「BF506F」が14mm×14mm、120ピン、0.4mmピッチのLQFPとなっている。なお、いずれも温度範囲は0~70℃対応品と、-40~+85℃対応品の2種類を用意しているほか、BF504FおよびF506Fはオプションとして300MHz動作品も用意している。

BF50xファミリと競合製品の比較

価格はそれぞれ1万個単位でBF504が4.50ドルから、BF504Fが6.50ドルから、BF506Fが10.60ドルからとなっている。サンプル出荷はすでに開始されており、2010年第4四半期からの量産を予定している。

このほか、開発を容易にするために、BF506Fを搭載したスタータキット(評価キット)「EZ-KIT Lite」を用意したほか、JTAGエミュレータとして「ICE-100B Blackfin JTAGエミュレータ」も用意。いずれもすでに提供を開始しており、評価キットが199ドル、エミュレータが150ドルとなっている。また、Blackfinに対応したソフトウェア開発プラットフォーム「VisualDSP++」の90日間無料トライアル版の提供も行われている。

BF506Fを搭載した評価キットの価格は199ドル。JTAGエミュレータの価格は150ドルで、いずれも「かなり戦略的に意識した価格」(藤川氏)とのこと