日立グループの一員として展開するSAPビジネス

日立システムアンドサービスのアプリケーションシステム本部 ERPソリューション第1部 担当部長 大崎多朗氏

日立製作所の子会社であり、日立グループの情報システム事業の一角を担うのが、日立システムアンドサービス(以下、日立システム)である。

同社は、システムインテグレーションおよびシステムサービスを事業の主力とし、情報システムに関するコンサルティングからシステムの企画/設計、開発、保守/運用に至るまでのトータルソリューションをワンストップで提供できるのが特徴だ。

1994年に、同社は日立製作所とともに、SAP製品による基幹システムの構築をスタートした。このプロジェクトへの参画に合わせて、SAP専任のコンサルティングチームを形成した。

2006年4月には、SAPジャパンとサービスパートナー契約を締結。ビジネスコンサルティングからSAPソリューションの導入、インテグレーションの統合ビジネスにも着手。2009年8月には、SAP ERPのチャネルパートナー契約を結び、ソフトウェアライセンス販売からシステム構築、保守・運用に至るまでの一貫したサービスの提供を可能としている。

さらに同社では、今年1月にSAP AGの新たな一員となったBusinessObjectsの日本法人である日本ビジネスオブジェクツのゴールドパートナーでもあり、日本におけるBusinessObjectsの事業拡大でも重要な役割を担うことになる。

SAP認定コンサルタントは、現在、社内に45人。さらに、日立グループの医薬分野向けの長年の実績を生かして開発した医薬品製造業向けSAP All-in-One認定ソリューション「Specific for Pharma」を製品化している。

日立システムアンドサービスのアプリケーションシステム本部 ERPソリューション第1部 大崎多朗担当部長は、「SAPは、パッケージという観点からも、ユーザーの要求を100%実現できるソリューションではないが」と前置きしながらも、「短期間での導入を可能とし、明確な効果をもたらすという点、さらには24時間体制での顧客SAPシステムの保守支援などを考えると、数多くのERPソリューションのなかでも、SAPの技術および支援体制はトップランナーのような存在ではないか」と語る。

同社では、日立のERPパッケージ「GEMPLANETシリーズ」のほか、マイクロソフトのDynamicsや、オラクルのE-Business Suiteなどを取り扱ってきた経緯がある。「当社におけるSAPの事業規模はまだ少ないが、SAPという選択肢を提案できるのは大きな強みになっている」と続ける。

日立システムのSpecific for Pharmaも、平均的な例として、導入期間6カ月、1億5,000万円の投資で導入が可能という点がユーザーから評価されており、今後は、医薬品業界に留まらず、成分表などをもとにした商品管理が求められる化粧品、食品などの業界にも展開していく考えだ。

求められるのは技術スキルとコミュニケーション能力

一方で、SAP認定コンサルタントの育成にも余念がない。

「SAPコンサルであればもちろんSAPスキルは必須です。そのほかに挙げるとしたらやはり人間力でしょうか。お客さまとの折衝能力はコンサルには絶対に欠かせない能力ですから」(大崎氏)

とくに、来年度以降から積極的な育成計画に取り組む考えで、現在、45人のSAP認定コンサルタントを、2012年度には60人体制にまで拡大し、関連子会社を含めて80人以上の体制へと拡張したい考えだ。

「SAP認定コンサルタントの増加とともに、複数のスキルセットを持つコンサルタントのダブルスキル化にも取り組んでいきたい。これにより、柔軟性を持った形で、顧客対応ができる体制を確立したい」とする。

一方で日立システムとして、SAP認定コンサルタントの育成において重視しているのが、「ノーといえるコンサルタントの育成」だ。

「SAPのパッケージは、日本の企業の要求にあわない部分がどうしても出てくる。だが、これをすべて聞き入れてカスタマイズするのではなく、出来ないことは出来ないということが必要。80:20ルールの考え方を用い、重要な80%は実現できるが、20%の出来ない部分を納得してもらえるようにする能力がコンサルタントには求められる。また、51%は顧客の視点で、49%をシステムインテグレータの視点で考えるバランス感覚も必要。これまでは8割、9割を顧客のためと考えていたが、SAPのパッケージを活用してお互いの成功を目指すのならば、こうした発想も必要になる」と、大崎担当部長は、SAPビジネスならではのコンサルタントの役割をこのように説明する。

「資格は勉強すれば取れる。だが、プロジェクトを成功させるコンサルタントの育成には時間がかかる。資質が5割、経験が5割。とくにコミュニケーション力は素養として最も必要なものになる。コンサルタントを育てるのは、人間力を育てるのと同義語だと思っている」とする。

日立製作所からは、プロジェクトマネージャー(PM)/プロジェクトリーダー(PL)の育成を求められているという。そこで必要なのは、素養プラス経験、そして人間力が高い人材である。大崎担当部長は、認定資格の取得だけに留まらない、本物のSAP認定コンサルタントの育成に力を注いでいくと力を込めた。