アームの代表取締役社長である西嶋貴史氏 |
英ARMは11月9日、都内で記者会見を開催し、先般発表した次世代プロセッサコア「ARM Cortex-A5 MPCore」の概要および同社のビジネス概況の説明を行った。
最初に登壇した同社日本法人アームの代表取締役社長である西嶋貴史氏は、同社のビジネス概況について、「2009年第1四半期、同第2四半期とARMコアの出荷数は10億個を割っていたが、同第3四半期では10億個を初めて越した2008年第3四半期のレベルまで戻ってきた」とし、ライセンス数も「第3四半期までの段階で、例年以上のライセンス数の提供を実現している」と好調をアピールする。
、ARMのマーケティング担当 上級副社長であるIan Drew氏 |
こうした同社が好調を維持している状況について、ARMのマーケティング担当 上級副社長であるIan Drew氏は、「ARMコアの適用分野が携帯電話から、そのほかの分野にも広がり、その結果としてライセンス数も拡大している。例えば、ARMコアを搭載したモータ制御用マイコンを活用することで、これまで以上に電力効率の高い管理ができるようになり、結果としてCO2の削減といったことにもつながる」と、ARMプロセッサが携帯電話以外の分野でも活用が広がってきていることを強調する。
また、同氏は「ARMは、アーキテクチャを変えるだけではなく、ビジネスモデルそのものを変える手助けをしている」とし、「我々が提唱するインターネット接続というのは、すべての場所での接続であり、PCで経験できることをテレビや冷蔵庫などでもできるようにすることが目的であり、そのために"Cortex-A5"が開発された」と指摘する。
Ian Drew氏が右手に持っているのがシャープの「NetWalker(ネットウォーカー)」、左に抱えているのがPegatronのNetbookとDellのLatitude Eシリーズ(いずれもARMコアを搭載している) |
従来コアよりも高性能で低消費電力、低コストを実現
ARMのVice President of Markrting,Processor DivisionのEric Schorn氏 |
Cortex-A5に関しては、ARMのVice President of Markrting,Processor DivisionのEric Schorn氏が詳細を説明した。
現在、ARM Cortex-Aシリーズのコアとして、「Cortex-A8が2009年から搭載したデバイスの量産が開始、2GHzに対応するCortex-A9 MP Coreも2010年には量産デバイスの供給が開始される見込みだが、これらはハイエンド機器向けで、より高いパフォーマンスが要求されている分野への適用が見込まれている。そうした意味では、現在のハイエンド機器への適用コアの主流はARM11であり、ボリュームゾーン向けにはARM9が対応している」と説明する。
こうした状況に対し同氏は、「Cortex-A5が狙うのはこうしたメインストリームだ」とし、ARM11およびARM9が適用される分野をCortex-A5で置き換えていくことを見込んでいる。また、「これらの分野の置き換えを実現するために、ARM11よりも性能を実現しながら、フットプリントはARM9と同等、コストもARM11よりも抑えることに成功している」とする。
具体的な性能比は、TSMCの40nmプロセス(LPもしくはG)を採用したCortex-A5搭載デバイスは、2005年のARM9比(一般的に130nmプロセスを使用したデバイス)でパフォーマンスが約3倍に、シリコンエリアおよびコストは1/5としているほか、2008年のARM11比(一般的に90nmプロセスを使用したデバイス)で消費電力を1/3に削減することに成功しているとする。また、互換性についても、6世代前(約10年ほど前)のARMプロセッサまで対応しており、「既存資産の流用が可能であり、ベンダサイドのタイム・ツー・マーケットの縮小が可能だ」とする。
数値的な性能としては8段パイプラインを採用しており、1.5DMIPS/Hzを実現しているほか、TSMCの40nm LPプロセスで500MHz駆動、同40nm Gプロセスで1GHz駆動が可能であり、いずれもシリコンエリアは0.9mm2とする。
なお、同コアはすでにライセンスの提供が開始されており、Cortex-A5単体で3~4社、サブスクリプションを含めたもので6~7社とするが、ARM11のライセンスは70以上、ARM9に至っては250以上提供されており、どうようの市場を狙っていることから、同規模まではライセンスを提供していけると見込んでいるとしている。