ライフサイズ・コミュニケーションズは10月19日、業界として初となる手のひらサイズの小型HDビデオ会議システム「LifeSize Passport」を発表した。また同時に、従来製品シリーズ「LifeSize 200」を一新、新たに「LifeSize 220」シリーズとして展開していく。米LifeSize Communications CEO兼共同創業者であるクレッグ・マロイ氏は「品質、柔軟性、コストパフォーマンスの3点で競合他社の追随を許さない」と新製品への自信を隠さない。拡大を続けるテレプレゼンス市場で、シスコ、ポリコムといった大手競合との戦いに挑む。

ビデオ会議システムを使って米国から製品発表会に臨んだLifeSize Communicaitons CEOのクレッグ・マロイ氏。手にしているのは新製品の「LifeSize Passport」

ビデオ会議システムをすべての人に - LifeSize Passport

LifeSize Passportはその名前が示す通り、A5サイズよりも小さい"手のひらサイズ"が最大の特徴のHDビデオ会議システム。「これまで、テレプレゼンスは会議室や役員室などハイエンドでの利用に限られがちで、それ以外での遠隔会議は低画質のWebカメラなどを使って行われることが多かった。LifeSize Passportにより、テレプレゼンスの品質をどこにでも届けることができる」(マロイCEO)としているように、設置場所を選ばず、遠隔地の社員やテレワーカーによる使用、または貸し出し用機材としても手軽に利用することができる。また、1台40万円前後という低価格から、テレプレゼンスの全拠点導入も実現しやすい。

LifeSize Passportのもうひとつの"業界初"はSkypeの音声利用を可能にしている点だ。「Skypeのユーザは全世界に4億8,000万人いる。これらの人びととLifeSize Passportを通じて簡単にボイスネットワークを実現できるメリットは大きい」とマロイCEO。LifeSizeは今後、ソフトウェアアップデートを通じてさらに多くのSkype機能を提供するとしている。

小型/軽量ながら720p30のHDビデオとHDオーディオを提供、帯域1MbpsでHDビデオ通話をサポートする(最大2Mbps)。標準規格に準拠しているので、他のビデオ会議システムとの連携も可能だ。価格はカメラタイプによって異なり、固定焦点型+組み込み型マイクロフォンの「LifeSize Passport with Focus」が39万8,000円(税別、以下同)、パンチルトズーム機能+小型マイクの「LifeSize Passport with PTZ」が49万8,000円。発売は2009年第4四半期開始予定。

固定焦点型カメラのLifeSize Passport with PTZ。本体のサイズは幅20cm×奥行き12cm×高さ3cm、重量450g

フルHD品質を100万円から - LifeSize 220シリーズ

ラインナップが一新されたLifeSize 220シリーズは、内蔵型フルHD1080pによる接続を可能にする製品群。最大8拠点接続をサポートする「LifeSize Room 220」、同様に最大4拠点接続をサポートする「LifeSize Team 220」、100万円を切る価格で登場した2拠点接続の「LifeSize Express 220」が発売される。価格はそれぞれ280万円、200万円、99万8,000円(いずれも税別)となっている。発売開始は2009年第4四半期。マロイCEOは「いずれも同クラスの他社製品に比べ、約1/3のコストパフォーマンスを実現している」としている。

ダイナミックに変貌しつつあるテレプレゼンス業界

金融不況や新型インフルエンザの流行など、社会的には"負の要因"といえる要素が、ビデオ会議システムの市場を大きく拡大しつつある。業界業種を問わず、世界レベルでコスト削減が進んだ結果、出張の非効率性が指摘されるようになり、結果、ビデオ会議への関心が高まることになった。加えて、環境保護の高まりや、グローバライゼーションの進行、テレワーカーの増加、インターネット回線のキャパシティ増、デジタル画質の向上など、多くの要因が重なり、テレプレゼンス市場全体が拡大傾向にある。

そしてその波に乗って、LifeSizeのビジネスも成長基調にあるとマロイCEOは言う。「2005年に設立して以来、順調に成長を続け、すでに世界80カ国に9,000社以上の顧客企業をもつ。2008年の売上高成長率は140%以上、また売上の半分を米国以外の地域が占めている」と同社の継続的成長を強調する同社だが、一方で、CiscoやPolycomといった競合とのシェア争いも激しくなってきている。

とくについ最近、業界2番手のTandbergを買収したCiscoの勢いは、同社にとって最も気になるところだろう。だがマロイCEOは「Ciscoの参入によって、我々のビジネス戦略が変わることはない」と言い切る。「今は世界がコミュニケーションのあり方を変えているとき。Ciscoの参入でたしかにビデオ会議システム市場はますます拡大するだろう。だが、我々はこの業界に"イノベーション"を持ち込むことを常としてきたし、今後もその姿勢に変わりない。戦略パートナーや競合との関係は、ときに見直す必要はあるかもしれないが、今はそういう時期ではないと思っている」(マロイCEO)

今回新発売となった製品を見てもわかるように、同社のメインターゲットは中堅/中小企業、つまり「ビデオ会議システムを初めて導入する顧客」が多い。「ようやくビデオ会議システムが大企業の役員室だけのものではなくなってきた」とする同社だが、今後もSMB市場を核とした戦略に大きな変更はなさそうだ。ただしマロイCEOは「SMBだけをターゲットにしているわけではない」とも言う。市場拡大に伴い、どれだけ幅広い顧客層にアプローチできるかが、同社のシェア拡大のカギを握るといえそうだ。

なお、LifeSize製品の日本国内における総販売代理店は日立ハイテクノロジーズとなっている。