ロボットの研究を続けた電電公社・NTT時代

その後、1975年に大学院修士課程を修了した水川氏は、電電公社(現NTT)に入社し、武蔵野電気通信研究所の勤務となった。コンピュータのOS開発を希望したがかなわず、磁気テープや磁気ディスクなど記憶装置の開発していたと言う。

そんな時、1981年に石川島播磨重工業(現IHI)から故・真藤恒氏が総裁に就任、民営化を推進し1985年にNTT初代社長となった。後にリクルート事件で渦中の人となる真藤氏だが、非常に広い目で技術の歴史と展開を考えた人物だったそうで、それまであまり外に出ていなかった電電公社の技術を、資源のない日本のため、国内製造業の維持発展のために役立てたい、ということで、急遽、研究所から水川氏らが呼ばれた。

生産の現場にロボットの制御技術などをもっと導入しようということになり、知能ロボット研究部が発足。こうした議論もすぐにできたのは、入社後も大学の研究室とコンタクトを持って後輩の研究指導に当たり、ロボットの研究はずっと続けていたからだとか。

電電公社時代は、真藤社長との出会いでロボット研究部を発足させた

こうして電電公社・NTTに25年間勤めた後、2000年に現在の芝浦工大に着任した水川氏だが、一貫して技術の現場に関わってきた経験から、"モノの見方"を学んだと言う。どんな装置でも情報を得て物を動かすという制御の基本は同じなので、対象が変わっても何でもできるようになったそうだ。自身がモノ作りが好きだからこそ、今の学生や新入社員達のモノ作りに手が出ない現状を憂いていると言う。

愛・地球博に出展された芝浦工大のロボット

ここで話は変わり、現在の芝浦工大でのロボット開発事例として、愛・地球博プロトタイプロボット展に出展された物理エージェントロボット「PAR04R」が紹介された。

代理人ロボット「PAR04R」

リビングゾーンにおいて、複数のロボットが共同で人を助けるシステムの一環として合同出展されたもので、東芝の「聞き分けアプリアルファ」、電気通信大学 大学院情報システム学研究科 高瀬研究室の「全方向移動車椅子ロボット」、名城大学 理工学部機械システム工学科 大道研究室の全方向・全方位移動ロボット「エコノビークル」と連携して動作する実際のデモの様子も動画で披露された。

動画
合同デモンストレーション、リハーサル時の記録(wmv形式 6.39MB 2分12秒)

「電通大の車椅子ロボットに足の不自由な人が乗っているという想定で、東芝のロボットが人を追いかけ、名城大のロボットが宅急便で届いた荷物を持ってくる。荷物の中から落として床に転がってしまった物を、我々の"PAR04R"が拾って、車椅子の人に渡してあげる。そういうデモを行った」

"PAR04R"には中央の搭上の部分にレーザーポインタとカメラが搭載されており、レーザーでターゲットを指示するなどの仕組みで簡単に操縦できるようにしたと言う。ロボット本体は学生の手作りだそうで、「何も知らない子が大学1年から入ってきても、こういうロボットが作れる。それだけの技量を持たせることが大事」と水川氏は語った。