英国大使館は10月8日、英国よりグリーンITの専門家4名が来日したのに伴い、同国のグリーンITの取り組みに関するセミナーを開催した。先月、鳩山由紀夫首相が国連気候変動サミットで国際公約として「CO2の25%削減」を宣言したことが話題となったが、CO2削減は世界をあげて取り組むべき重要課題となっている。今回は、同セミナーより、英国のグリーンITへの取り組みの現状を明らかにしたい。

グリッド・コンピューター知識移転 ネットワーク ディレクター イアン・オズボーン氏

今回来日した4名は、英国のグリッド・コンピューター技術移転ネットワーク「Grid Computer Now! KTN(Knowledge Transfer Network)」の調査団の一員だ。同調査団のディレクターを務めるイアン・オズボーン氏が初めに講演を行った。

同氏は、「現在データセンターでは課題がいくつかある。1つは電力の不足で、これはサーバの稼働率を上げることでその台数を減らすことが対策となる。サーバをはじめとする機器が増えると、エネルギーコストもCO2排出量も増加する。ITの効率化が、データセンターのすべての課題の解決につながる」と述べた。

ITの効率が良いデータセンターの例として、Googleのデータセンターが挙げられた。同社のデータセンターは他のデータセンターと比べてさまざまな工夫を凝らしているという。例えば、サーバは不要な機能を外すことで電力量の最小化を図っており、また、電力源はCO2を排出しない水力発電に求めている。このような策により、同社のデータセンターの間接費は他のデータセンターの10分の1に抑えられているという。同氏は、今回NECを訪問した際、「今後は、他のデータセンターもGoogleのデータセンターのような仕様に変えていくことが課題だと言っていた」と語った。

また、英国では海水を使ってデータセンターの冷却を行ったり、沿岸地域にデータセンターを建設したりといった形でデータセンターのエネルギー問題に取り組んでいるという。

Romonet マネージング ディレクター兼データセンターグループ長 ザール・リンブワラ氏

次に、Romonet マネージング ディレクター兼データセンターグループ長 ザール・リンブワラ氏が、データセンターにおいてコストや電力利用量といった各種要素を計測することを中心に講演を行った。

同氏は、「データセンターは個々のコンポーネントの集合体ではなく、相互依存的なシステムである。だからこそ、最適化のチャンスがある」と指摘した。現在、ITはレイヤ単位で考えられがちだが、サービスごとに価値を考えなければならないという。

それには、何らかのツールを用いてサービスのシミュレーションを行う必要があるのだが、「こうした複雑性を満たすツールは今のところ存在しない」と同氏。そこで、同社では、データセンターのアプリケーションのワークロードからCO2の排出量までをシミュレーションするためのツールを提供している。

同ツールは、データセンターのさまざまな要素に対して数字を割り当てることでエネルギー利用量やコストを算出する。例えば同ツールでは、温度とIT機器の利用率からデータセンターの効率をシミュレーションしたり、データセンターのコストやエネルギー利用料の内訳を分類したりすることができる。

同ツールを用いて、仮想化していないサーバ100台を利用しているデータセンターと仮想化してサーバを55台に減らしたデータセンターを比べたところ、コストが5分の1に減り、エネルギー量も大幅に減ることをシミュレーションできたそうだ。

Romonetのデータセンター用シミュレーションツール「data centre simulator」の画面