その頃、オンライン参加者は

今回のイベントには2人のスペシャルゲストが招かれていた。会場にではなく、Twitter上にだ。一人目は"Twitter議員"の逢坂誠二氏。イベント開始から30分ほど経過した頃に、会場でのトークをいったん止めて勝間氏が逢坂氏にTwitter上で呼びかけ、政治活動におけるTwitterの利用についてリアルタイムで議論するという企画だった。

イベント開始時から逢坂氏本人のつぶやきが流れていたのでサプライズ感はなし

しかし、リアルタイムと言ってもメッセンジャーや電話と異なり、Twitterでは数十秒程度のタイムラグが発生する。会場のスクリーンに表示されるポストは検索で抽出ているため、さらに時間が必要だ。こうしたシステム上の問題でもたつく場面がたびたび見られ、Twitterがイベント内でオンライン議論を実演するツールとしては向いていないことが証明された格好となった。

逢坂氏は今回の企画に対して「Twitterは、質問・回答という使い方ではなく、たとえば勝間さんの発言に対する、リアルタイムな意見表明に使うと有効」と述べている。

もう一人のゲストはみんなの"ツイドル"広瀬香美氏。イベント開始約1時間後に勝間氏がTwitter上で登場を呼びかけた。が、応答無し。反応を待つ間、会場ではまた参加者からの質問を受け付けることにしたが、勝間氏の回答が始まった頃に応答が届いた。回答の間に広瀬氏から出番を間違えたかと不安がるポストが届き、勝間氏は会場で質問に答えながら広瀬氏にリプライを送っていた。

呼びかけた時点で広瀬香美氏の直前のポストが11時間前となっており、絶望的かと思われた

それでも広瀬氏は「現代人はコミュニケーション能力が足りないと言われますが、twitter的繋がりは、素晴らしい現代のコミュニケーションだと思います」と進行が目指す方向の発言を行っていた。

このように、2度にわたる出だしのグダグダ感により、時間で進行するイベントにおいてTwitterを利用することの脆さが露呈した。オンライン上のゲストが会場の議論に対してそれぞれの立場から意見を述べられたことは非常に有意義であったが、リアルタイム性を要する対話を実演するならSkypeなど他のツールを含めて柔軟に検討する必要がありそうだ。

もう一つ、会場での進行においてTwitterを見ていない人、逆にTwitter/動画中継のオンラインで参加している人への対応も課題が残ったと言えるだろう。ゲスト参加の場面においてはTwitterだけで進行してしまった面があったり、オンライン参加者がただの"視聴者"にとどまってしまった点はもったいなかった。

トークイベント翌日、Twitterで意見交換は続く

原稿執筆時点でも、本題について、周辺事項について、少しずつポストが増えている

イベント終了後も、#crosstalkにはポストが続いた。むしろ、本題であったネット実名制についての意見は終了後のほうが多く寄せられていたようだ。また、リアルタイムで参加していなかったが後から履歴を読んで感想をポストした人も多かったようだ。ネット実名制に対する考えを問う場としては、実名で投稿する「クロストーク」よりもTwitterのほうが適しているのではないか、という意見もあった。現場ではタイムラグが致命的だと思われた勝間氏と逢坂氏のやりとりも、履歴で見ると意味が通じている。

ただし、ハッシュタグ上では会場中継、本題についての議論、ゲストとのやりとり、進行へのツッコミ、少し前の質問に対する意見など、複数のトラックが交錯している。後から発言を追う際のインタフェースとしては上下スクロール以外の方法(3Dマッピングなど?)もあって良いのかもしれない。

さらに翌日にかけては、Twitterにとどまらず、イベントに関連したブログエントリ、それに対するブックマークコメント、そして本丸である毎日jp「クロストーク」への投稿など、様々な方向への発言の広がりを確認することができる。

実験的な試みとしてTwitterの可能性と限界の一面を見ることができ、本題であるクロストーク連載のテーマ「ネット実名制」につても議論に弾みが付いたという意味で、実りあるイベントだったと言えるだろう。