オープンソース普及にとっての大きな障害の1つは特許などの知的所有権(IP)の存在だ。こうした権利を盾にITベンダや大手顧客を手当たり次第に裁判で訴えていたSCOの件が記憶に新しいが、オープンソース推進団体もこうした事態に手をこまねいているわけではなく、一致団結して自衛策をとっている。将来起こりうる災厄を避けるためにも……。

こうしたオープンソースソフトウェア(OSS)陣営が設立した代表的な組織が「Open Invention Network(OIN)」だ。2005年11月に独立企業として設立され、IBM、NEC、Novell、Philips、Red Hat、ソニーといった大企業が主幹事として参加している。その目的はLinuxや他の関連製品など、OSSに関連する特許の一元管理とライセンスにある。これに同意する企業はOINの保有するIPのライセンスを受けられる代わりに、自身の保有する特許を盾にOINがターゲットとするOSS製品に対する訴訟を放棄しなければならないルールがある。つまり、OINが特許を抱え込むことで将来的なOSSに関する特許紛争を避けることが狙いにある。OracleやGoogleなどもライセンス企業としてOINと契約を結んでいるほか、今年3月にはカーナビゲーション大手のTomTomがやはりOINのライセンシーとして契約を結んでいる。

米Wall Street Journalの9月8日(現地時間)付けの記事によれば、OINが近々新たに22の特許を取得する計画だという。この特許を保有するのはOINと同じく特許保有会社のAllied Security Trust (AST)で、対象となる特許はもともとMicrosoftが保有していたものだ。ASTにはメンバーとしてCisco Systems、Ericsson、Hewlett-Packard (HP)、Motorola、Verizon Communicationsなどが参加しており、WSJによれば今週中にもOINとAST共同で発表が行われる見込みだという。両社が手を結ぶことで、より特許紛争における対応力が高まることになる。

OINのようなOSSをベースとした団体が警戒しているのは、Microsoftの動きだ。ここ数年のMicrosoftは米国の特許取得数で毎年トップ5に含まれるランクに位置し続けており、急速に有力な特許保有企業になりつつある。MicrosoftもLinuxなどのOSSが近い将来に大きな特許紛争に巻き込まれる可能性を示唆しており、Microsoft自身が特許紛争を仕掛けていないにもかかわらず、潜在的な脅威と業界では認識している。現時点での可能性は低くても、競合関係にある両者が将来的に安定した関係にある保証はないからだ。