産業技術総合研究所(産総研)は8月24日、将来的なリチウムイオン電池の爆発的な普及によるリチウム資源の制約に対応可能な低コストで再生可能なリチウム電池として「リチウム-銅2次電池」を開発したと発表した。

「リチウム-銅二次電池」の構成(左)と、従来技術との性能比較(右)(単位はmAh/g)

従来のリチウムイオン電池の場合、寿命が尽きた電池のリサイクルとして活物質と導電助剤、カーボン、集電極との分離が難しい課題となっていた。今回開発されたリチウム-銅2次電池では、金属リチウムからなる負極側に有機電解液を、金属銅からなる正極側に水性電解液を用い、両電解液を固体電解質の壁で仕切り、両電解液の混合を防ぐ構造を開発した。

固体電解質の壁はリチウムイオン(Li+)だけを通すので、銅イオン(Cu2+)は有機電解液に到達しないため、安定した電池反応(充放電反応)が可能だ。具体的な反応は、負極ではLi++e-→Li、正極ではCu→Cu2++2e-となり、e-が配線に供給されることとなる。

また、放電時の電極反応は、Li→Li++e-となり、溶解したLi+は固体電解質を通り抜けて正極側の水性電解液に移動する。一方の正極での反応はCu2++2e-→Cuとなり、Cu2+が正極側の水性電解液から正極表面に達し、そこで配線からe-が供給され、金属銅の析出反応(めっき)が起こることとなる。

この電池の正極側の放電容量密度は約843mAh/gとなり、放電容量密度は、843mAh/g(正極で反応した銅重量あたり)と従来のリチウムイオン電池の5倍以上(正極容量:120~150mAh/g)となった。また、100回の充放電試験後も、放電容量の低下は微小であったことが確認された。

今回開発された電池の充電・放電曲線(左)と、充電・放電特性(右)

同電池は、電極に単純な金属のみを使用しており、金属と金属イオンとの変化(金属の溶解・析出反応)を利用しているため、使用後も活物質は金属のままとなり、電極金属のリサイクルが従来のリチウムイオン電池と比べて容易となる。また、水性電解液と有機電解液は、固体電解質の分離壁で仕切られており、両者を個別に再生することも可能である。

また、電池の充放電反応は、金属表面での金属イオンの溶解と、金属表面が金属イオンによる"めっき"反応だけであるため、理論的には大きな電流密度での使用も可能であるが、現段階では固体電解質の分離壁のリチウムイオンの伝導率が十分ではないため、産総研では今後、出力密度を改良していく必要があるとしており、分離膜として用いた固体電解質のリチウムイオン伝導率を高める研究を進めていくとしている。