ガートナー リサーチ バイス・プレジデント 飯島公彦氏

「将来に繋がる企業体幹を構築するSOA」をテーマに、SOAの導入、戦略的な活用、SOAを支える技術の最新動向などを広く紹介するとともに、SOAの未来像、可能性などを論議する「ガートナーSOAサミット2009(主催:ガートナー ジャパン)」が東京・港区内で開催された。

初日の基調講演には、「SOAシナリオ2009:進化の能力としての体幹を鍛えなおす」と題し、ガートナー リサーチ バイス・プレジデント 飯島公彦氏が登壇、日本企業のSOAの適用状況、技術の状況、SOAについての今年の重点項目などを解説した。

国内企業は、アーキテクチャ選択の能力を養うべき

ガートナーによれば、新しい技術が浸透していく過程を、成熟の度合いで追っていくと、まず「黎明期」が始まり、次に「『過度な期待』のピーク期」が来て、次にはさまざまな疑問の声が聞かれ「幻滅期」を迎え、それが過ぎると「啓蒙活動期」を経て、「生産性の安定期」になるという。

同社の調査によると、2009年は、2,000人以上の企業で適用中も含めると16%が適用に入っており、2010年には30%に達するとの見通しだ。昨年は10%だった。

ただ、現状は「幻滅期」にあるのではないかと、同社ではみている。だが「幻滅期は3年以内に脱却できる確率が高い」との見通しだという。

企業がSOAを適用する際に重要なポイントとなるのは、「システム間の相互運用性とともに、どこに適用していいのかわからない、との問題」だと飯島氏は指摘する。ここで必要になってくるのは、ビジネス部門とIT部門の相互理解だ。ビジネス側が効果だけを求めてIT側に迫ると、それはかえって阻害要因になりかねない。

推進要因としては、ITのビジネス上の価値を向上させること、見える化を進展させること、業務のリアルタイム化を実現させ、アプリケーションそのものを柔軟性を確保することなどだという。

飯島氏は「ビジネス側とIT側の戦略がうまく合致させている企業は成功する。どのような効果を狙うのかを明確にして、そのために、どういうアーキテクチャーを選択するのかという能力を得ることが、日本企業にとって重要になる」としている。

それでは、SOAはどのような形式でビジネスに実装されているのか? 飯島氏は、例として金融機関を挙げる。例えば、銀行のサービスに対し、エンドユーザー側からは、携帯電話、インターネット(パソコン)、実際の店舗など、アクセスのための複数のチャネルが存在する。この場合、サービスがチャネルごとに別々なものになってしまうと非効率になり、コストも上昇する。SOAの思想では、サービスは集約化され、一つのサービスを、多様なチャネルに対し供給できるわけだ。