エジプト・カイロでは、「国連ミレニアムの開発目標」を達成するためのアイデアを携えた学生たちが世界各国から集まり、コンペティションを繰り広げている。マイクロソフトはなぜこのような大規模なITコンテストを開催するのだろうか。本大会の意義について、同社ソフトウェア チーフアーキテクトのRay Ozzie氏らが語った。

会見でImagine Cupの意義について語るRay Ozzie氏(左から2番目)

「GoogleやYahoo!など世界に大きな影響を与えている企業は、学生が興したものだ」とOzzie氏。学生が持つ現実に縛られない方法論が、これらの世界的企業を誕生させた。彼らは「世界に変化をもたらしたいと考え、技術が持つ可能性に魅了され、理想をかなえたいという強い信念を持っている」(Ozzie氏)。Imagine Cupの開催意義は、そうした学生が世界から注目を浴びるチャンスを与えることにある。

Ozzie氏らと登壇したDevin De Vries氏は、Imagine Cupを通じて道が拓けたひとりだ。2008年大会のソフトウェアデザイン部門に南アフリカ代表として出場。同国における不安定な公共交通の状況をモバイルで確認できるシステムを考案した。これが同大会スポンサーの目にとまり、起業支援プログラムを受けて2008年9月に起業した。現在は、2010年のサッカーW杯南アフリカ大会で役に立つよう準備を進めているという。

組み込み開発部門を統括するScott Davis氏(Microsoft Academic and Community programs for Windows Embedded Lead)は、Imagine Cupと組み込み開発分野の関係について次のように話す。「これまで組み込み開発で注力してきた分野は、金融や工業などビジネス的な要素が多かった。Imagine Cupのテーマに沿ったプロジェクトを学生が立ち上げることにで、組み込みの世界が広がり、学生のレベルも格段に向上した」。本大会でも多くのチームが、飢餓や医療といった問題に取り組んでいる。

組み込み開発部門のファイナリストたちとImagine Cupの意義について語るScott Davis氏(右から2番目)

Imagine Cupの大会テーマが、例年のひとつから「国連ミレニアムの開発目標」という8つのテーマを掲げることになったのも、学生のチャレンジの場を広げる狙いがある。この開発目標は、新興国における課題が多くを占めるため、先進諸国の学生には身近な問題として捉えることは難しいかもしれない。しかし、2年連続で大会審査員を務めるEdward Granger-Happ氏(Global CIO for Save the Children USA and UK)によると、Imagine Cupは「新興国の立場でソフトウェアを開発するためのアイディアを創出する機会」になっているという。Imagine Cupを通じて、学生たちは世界が抱える課題について真剣に考えるようになる。エジプト大会のテーマもその機会をさらに促進するものと言える。

学生からもImagine Cupの意義についてさまざまな言葉が聞かれた。「友人との共同プロジェクトは貴重な経験になった」「プロジェクトを通じて自分が本当にしたいことがわかった」「大会が終わってもプロジェクトは続ける。他の参加者や審査員からフィードバックをもらい、今後も改良を続けたい」──。Imagine Cupを統括するJoe Wilson氏は、世界大会へ出場した学生たちを「Best of Best」と賞賛する。「彼らは将来、CIO(最高情報責任者)やCEO(最高経営責任者)になる方々です」(同氏)。Imagine Cup卒業生たちの将来のポジションはどうであれ、大会にチャレンジした苦労、世界大会で得た経験が、彼らに大きな成長をもたらすことは間違いないだろう。

プロジェクトの進行や競技を通じて、学生たちはどんな成長を見せるのだろうか