セールスフォースではアプリケーション開発者向けの「Developer Edition」を除き、小規模組織向けの「Group Edition」、手頃な価格で高度な機能を利用できる「Professional Edition」、多様なビジネス体系をもつ企業に適した「Enterprise Edition」、企業におけるすべての活動をウェブ上で実行可能な「Unlimited Edition」という4種類のCRMソリューションを用意している。このサービス区分について福田氏は「企業規模を意識しているのではなく、あくまでも使える機能の範囲で価格帯を設定しています」と語る。

少人数の企業でもSalesforce CRMをうまく使いこなしている例が、ネジ製造・卸売業のツルガだ。ツルガでは、以前は一般的なグループウェアを採用しており、営業担当者が活動予定をカレンダーに、実際の営業内容を日報に記入する形式で業務を進めていた。しかし、これらのデータが連携していないために情報を共有しづらい状況にあった。さらに、大企業からの受注だけでなく、Webサイトを中心に小規模な取引数を増やしたことで、顧客情報の一元管理化が課題になっていた。そこで、2007年の初頭から導入したのが「Salesforce CRM」である。

ツルガでは、Webサイトの資料請求や問合せページからダイレクトに顧客情報を取り込む「WebToリード」機能を導入直後から活用。顧客情報を基に訪問した後は、担当者や商談内容などの履歴が関連付けて登録されるほか、案件一覧や売上状況など、経営者が見たい指標をグラフ形式で一覧表示する「ダッシュボード」機能により、多角的な経営分析も可能になった。このように、商談情報の共有と顧客への適切なフォローを実施した結果、2007年には売上毎月20%アップを達成できた。

多角的分析が行えるSalesforce CRMのダッシュボード

福田氏は「敦賀社長さんから"パート2名分と同等のコストで必要なデータを24時間提供してくれる、専属の営業支援担当者がいるようなものなので非常に助かる"というお言葉をいただけました。私の中でも一番印象に残っている事例ですね」と語る。

今後の舞台はユーザーが育てるプラットフォームへ

3月で創立から10年を迎えたセールスフォースでは現在、クラウド型プラットフォームサービス「Force.com」を推進する戦略にも注力している。これは、プラットフォーム上にユーザーインタフェース作成用の「Visualforce」やツールキットを用意し、顧客・開発者・パートナー企業などが自由にカスタムアプリケーションを作れるというものだ。これらを共有するためのWebサイトや、手軽に自社のSalesforce CRM環境に連携できる仕組みも提供されており、人事、マーケティング、開発ツールなど800以上のアプリケーションが公開されている。また、最近はLotus Notesのリプレース案件も増えているようだ。

「お客様からはよく業務の幅を拡大する予定を聞かれますが、少なくとも現状では今まで注力してきたCRM分野の機能拡張に絞り込むことを考えています。無数の業務に対応するアプリケーションをすべて私たちが開発していくのではなく、むしろセールスフォースが提供するプラットフォーム上で多くの方々に開発を行ってもらうというスタンスですね」と福田氏は、今後は独自のプラットフォーム戦略を推進していく考えを示した。