野村総合研究所は、売上高上位3,000社の情報システム担当役員(CIO)などを対象に実施した「ユーザ企業のIT活用実態調査」(有効回答数は515社)の結果を公表した。それによれば、IT投資が抑制傾向にある中で、ユーザ企業はIT活用テーマの絞り込みを強めている点が明らかになった。

IT投資の活用テーマではこれまで、業務プロセス標準化支援と業務効率化支援が2大テーマであり、これらを重視する企業が年々増えていたが、今回の調査ではほとんどのテーマが前年比マイナスを示し、経営管理機能強化支援が20.2ポイント増と唯一大きな伸びを見せた。

最重視または重視するIT活用テーマの推移

2008年度のIT投資分野を見ると、基盤関連が前年度比2.4ポイント増で全体の50.3%を占め、業務効率化目的が1.5ポイント減の27.2%で続く。今後のIT投資配分意向を尋ねたところ、情報活用目的と戦略的な目的は増加見込みが減少見込みを10ポイント以上上回ったが、基盤関連と業務効率化目的では増加見込みと減少見込みの差が小さい。

IT投資配分の推移と今後の変化 - 現在のIT投資配分の推移

これらの結果から、IT基盤の維持運用の費用削減は困難なため、業務システムの新規開発や機能拡張の抑制に加え、業務効率化など効果が明確になりやすい業務システムでも急を要さない分野では投資を抑制し、内部統制強化や経営管理強化に必須な投資に絞る姿勢が根底にあると、NRIは推測する。

IT投資配分の推移と今後の変化 - 今後のIT投資配分の変化(2008年度)

IT投資・費用の適正化方策として、システム基盤構成の見直しを挙げる企業が70.5%にのぼり、以下、サービスレベルの見直し(34.4%)、不要な業務システムの棚卸し(31.5%)、業務アプリケーションパッケージの積極活用(30.5%)が続く。定常的に発生するシステムの維持運営費用の削減努力によるものと、NRIはみている。

ITの新規投資や定常費用を削減する一方で、ユーザ企業の投資意欲の方向性も見て取れるという。

IT投資配分の推移と今後の変化 - 今後のIT投資配分の変化(2008年度)

ITをビジネスの基幹設備と考える企業は68.7%(32.2%+36.5%)、本業を強化するコアの技術と見ている企業は54.3%(22.1%+32.2%)にのぼり、これらの企業は限られた投資を現時点で必要な分野や将来に向けて自社の事業を支えるためのテーマに絞り、ITをより有効にビジネスに活用しようとしていると、NRIは分析する。