野村総合研究所が26日に発表した「経営戦略におけるITの位置づけに関する実態調査」によれば、企業は経営管理の高度化や効率化目的においてはITをある程度活用できているが、新商品・事業開発や海外進出、M&Aなど事業拡大や経営改革につながる施策では十分に活用できていないという課題が浮かび上がった。

この調査は、2008年9月2日から19日にかけて、日本国内に本社を持つ売上高上位の企業2006社の経営企画部門を対象に実施、397社から有効回答数を得た。

調査では、これまでのIT投資については「ある程度効果が得られている」との回答が57.1%で最多だが、「十分に得られている」と高く評価している割合は6.8%と少なく、IT投資の効果には必ずしも満足していないのが実情だ。

また、自社のIT活用段階について尋ねたところ、「ITを活用して、全社横断的に業務が最適化されている段階」以上に達している企業は3割を下回っている。

自社のIT活用の段階

経営上の重要施策の実行においては、「経営情報の一元管理」など経営管理の高度化や事業の効率化を目的とした施策ではITを積極的に活用すべきとの回答が多い一方、「新規事業開発・事業構成の多角化」「M&A」など成長につながる施策では積極的にITを活用すべきと考える企業は少ない。

また、96.2%の企業で経営戦略を策定しているが、IT戦略を明確な形で立て、役員会などで正式に決定している企業は4割を下回っており、IT戦略そのものが存在しない企業も2割前後ある。

経営戦略とIT戦略の立て方

IT戦略を立てている企業のうち経営戦略とIT戦略を一体的に策定している企業は現状では30.2%に留まる一方で、そのようにすべきと考える企業は57.6%に上った。

経営戦略とIT戦略の関係の現状とあるべき姿

自社のIT部門のIT戦略企画力に関する経営企画部門の評価は、同業他社と比べて高いとは見ていないのが実情だ。

野村総研は、企業におけるIT活用はまだ途上段階のため、経営に役立つIT活用を目指すべきであり、今後はIT部門の戦略企画力を高めると同時に経営企画部門とIT部門の連携を強化し、自社の変革や成長につながるIT活用を生み出し推進することが重要と提言する。