三洋電機は3月27日、次亜塩素酸とOHラジカルを含んだ電解水を生成する電解水生成技術の次世代技術として、絶縁材料である酸化タンタル(TaOx)とPtの混合物(TaOx-Pt)を薄膜積層した独自の「電解式オゾン生成電極」を開発したことを発表した。

今回開発された「電解式オゾン生成電極」の試作品の外観

従来の次亜塩素酸の発生原理は、2Cl-→Cl2+2e-、Cl2+H2O→HClO+H++Cl-で、水道水中に含まれる塩化物イオン(Cl-)を利用して、電気分解により電解次亜塩素酸(HClO)を生成するというもの。

従来の次亜塩素酸生成技術

これにより、アンモニアや硫化水素などの空気中の化学物質の分解を行っていたが、タバコ臭の原因である酢酸やカビ臭の原因であるジェオスミンなどは反応がしにくく、より酸化力を高める必要があった。

空気中の化学物質によっては分解が難しいものも存在する

そこで同社では次亜塩素酸に比べて酸化力の高いオゾン(O3)とOHラジカルに注目、研究を進めてきた。ただし、従来、オゾン水生成用電極として、二酸化鉛電極、ダイヤモンド電極、白金電極などが用いられていたが、鉛を用いた場合の環境への影響や、コスト高、生成効率などの問題があり、幅広い用途への適用は難しかった。

オゾン生成電極各種の性能比較」

三洋電機 研究開発本部 ヒューマンエコロジー研究所 所長の米崎孝広氏

同社では、こうした問題を克服するために、Ti基板の上にPtの中間層を形成、その上にTaOx-Ptを積層させることで、電極触媒として機能し、オゾンを生成することを発見、電極としての実用化を達成した。膜厚については、「μmオーダで積層している」(三洋電機 研究開発本部 ヒューマンエコロジー研究所 所長の米崎孝広氏)としており、「絶縁体を薄膜化して積層したことで、ITO膜のような酸化欠陥が生じ、電気を通すようになったのでは」(同)と原理を推測する。

新電極を用いたオゾンとOHラジカルの発生原理(オゾンの1部が反応してOHラジカルとなる)

絶縁体を薄膜として積層することで、電極の触媒として機能することを発見した

同電極は、絶縁材料を薄膜積層する独自の技術を用いることで、白金電極に比べ、低電流密度でオゾン生成が可能であり、電流密度が低ければ低いほどオゾンの生成効率は高まるという特長を持つ。また、酸素過電圧が高いため、低い電圧で酸素が発生せずに、1.5V程度を超すあたりからオゾンを発生させることが可能であり、白金電極と比べ1/4程度の電力でオゾンを生成することが可能である。ちなみに、電気代としては、「200ccのオゾン水を365日生成したとしても、年間で3.3円で収まる」(同)という。

一定の電圧をかけないとオゾンは発生しない(左)、電流が低いほどオゾンの発生効率は向上する(右)

消費電力は白金電極の1/4程度(ただし、製造コストについては、白金電極とほぼ同程度とのこと)

さらに、従来の塩素発生電極を用いた電解では、(日本の水道水のように)塩化物イオンが水中に存在している必要があったが、同電極では、水分子からオゾンを直接生成するため、水道水の含有成分による酸化能力の影響が少なく、海水淡水化技術などで作られたような純粋に近い、塩化物イオン含有量の少ない水での使用可能なため、海に面した砂漠地帯の沿岸部などでの使用も可能となっている。

塩素が含有していなくてもオゾンを発生させることが可能

気になる電極の寿命だが、「想定している時間はクリアしているが、市場に出回っている他の電極の寿命5000時間をまだ達成できるかどうかの試験が続いている段階であり、なんともいえない状況」(同)としている。

酢酸の分解除去性能(左)とジェオスミンの分解除去性能(右)

なお、同社では、同電極の用途についてあらゆる可能を模索していくとしており、できる限り早い段階で製品へ搭載をしたいとしている。

動画
染料(インディゴ)をオゾンを用いて酸化分解を行ったデモ(徐々に透明になっていくのが見て取れる)(wmv形式 6.06MB 1分22秒)