今回のISSCC 2009では、20GHzを超えるミリ波回路の発表が多く、10GHz未満の発表が減少の傾向にあったものの、RF回路ブロックのセッションでは、地上波デジタル放送用1チップICや、UWBといった個々の用途におけるアナログ回路手法の発表があった。その中で、CG (共通ゲート) LNAの雑音特性を向上させる興味深い手法が紹介された。

講演番号12.2 として発表された論文は、ジョージア大学とSamsung Electronicsの共同研究の成果であり、負帰還と正帰還を組み合わせて回路特性を向上させるというユニークなものである。

RF帯域の増幅器では、帯域やバラつき特性、インピーダンスマッチングなどの特性が優れた共通ゲート増幅回路が良く使われるが、これは低周波回路でよく見られる共通ソース増幅回路と比較すると、利得や雑音特性の点で不利である。

そこで、正帰還を用いて利得を増加させ、雑音指数を低く抑えたのが、本論文の手法である。完全差動構成のCG LNAに対して、入力MOSFETのゲート端子とソース端子をAC結合でクロスカップル接続して負帰還を構成し、さらに出力端子の電圧を入力とするCS(共通ソース)増幅回路を構成して、その出力を逆位相の入力端子に帰還させることで正帰還を構成する。

いずれも容量性結合が必要になるため面積的には不利であるが、こうすることで、「インピーダンスマッチングのためにトランスコンダクタンス値を20mSに設定しなければならない」という、CG増幅回路の欠点を緩和でき、かつ雑音指数の分母の係数を2倍にすることができる。

発表では、0.2GHzから1.4GHzの帯域においてS21が15-20dB、S11が-10dB未満、NFが3dB未満という特性が得られている。IIP3は-3.2dBmと、帰還を用いていても極端に悪いものではない。

面積は0.33mm2, 消費電力は3.6mWでNFmin は2dBである。プロセスがCMOS0.18μmであることを考えると、非常に電力効率が高く、良好な雑音特性となっていることが分かる。