基調講演の後半にはNTTドコモ 執行役員プロダクト部長 永田清人氏が登場し、同社とAdobeとの協業の歴史のほか、Flashを利用した最新の取り組みについて説明した。Adobeは現在、半導体メーカーや通信キャリアなどさまざまな企業らと連携してOpen Screen Project(OSP)を進めているが、このOSPメンバーの1つがNTTドコモだ。OSPではコンテンツのスクリーン表示におけるデバイス依存をなくし、さまざまなデバイスでリッチなコンテンツを利用できる環境の構築を目指している。その中核技術の1つがAdobe Flashだ。NTTドコモは2003年に世界で初めて携帯にFlash Liteを搭載したキャリアとして知られており、その後もコンテンツのリッチ化にFlash技術を広く利用している。Adobeにとっては、日本におけるFlashと携帯の融合を実現する強力なパートナーだ。また永田氏によれば、OSPでの戦略ビジョンが一致するなど、NTTドコモにとっても強力なパートナーだという。
NTTドコモでは携帯へのFlash搭載により、コンテンツのリッチ化のほか、文書ファイルの閲覧、ビデオ動画の再生など、さまざまなメリットを享受してきた。そしていまAIRの登場により、携帯やアプリの利用スタイルが変革することになると永田氏は説明する。たとえば現状ではビルの谷間や地下などで携帯が圏外となり、特にiモードなどのWebアプリの動作が阻害される現象がみられる。またスクリーン形状や記述作法の違いから機種間でアプリの互換性を持たせることが難しいなど、規格の統一されていない組み込み製品ならではの弊害も出ている。ところがAIRを利用することでコンテンツに統一性が生まれ、表現のリッチ化、そしてオフラインでの動作が可能になるなど、さまざまなメリットが生まれる。PCとアプリを共用できるのも新しい試みだ。さらにはゲーム機などを巻き込んで対戦ゲームなど、さまざまな応用が考えられる。
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Flashの搭載で携帯でのリッチコンテンツ実現やビデオ再生など、さまざまなサービスが利用できるようになった。AIRをサポートすることで、さらにオフラインでの利用やPCとのシームレスな連携など、新しい機能が付与されるようになる |
永田氏はNTTドコモが目指す目標として「ユーザーがどのスクリーンかを意識せず、サービスを利用し、ユーザー体験を共有できる」という仕組みの実現を掲げている。サンプルとして紹介したのがフォトアルバムのアプリだ。画面のデモでは携帯とPCのそれぞれにAIRベースの写真共有アプリがインストールされており、両者が同一のフォトアルバムを共有できるようになっている。片方の端末が行った操作がそのまま両者の見ているアルバムの内容に反映され、その逆もしかりとなる。特定の写真を拡大して見せ合うことで、相手とコミュニケーションのネタにすることも可能だ。PCユーザーがそのまま接続デバイスを携帯に切り替えることで、そのまま外出先でもお互いに通信が行える。デバイスを超えたコミュニケーションツールのような役割を担う。永田氏は「AdobeとともにこうしたFuture Mobile Experienceを実現していきたい」とコメントした。