日本アイ・ビー・エムの技術理事を務める菅原香代子氏。業界全体にわたって女性技術者を牽引する存在としても著名

1月27日都内で行われた「ソフトウェアジャパン2009」で、日本アイ・ビー・エム(以下、日本IBM)で技術理事を務める菅原香代子氏が、自身の体験を交えながら同社におけるメンタリング活動について講演を行った。ここでは、同社でメンタリングがどのように行われ、どのような効果を挙げているかについて知ることで、企業でメンタリングを活用するコツをつかんでいただければと思う。

日本IBMには女性技術者向けの社内コミュニティ「COSMOS」があり、菅原氏はそのリーダーを務めている。COSMOSは、同社における女性のテクニカルリーダーの少なさを解消することを課題としているが、その解決策の1つとしてメンタリングを推進しているという。

メンタリングが注目を集めているのはここ数年のことだが、同社では以前からメンタリングが制度化されており、男女ともに利用可能である。ただし、誰でもメンターを利用できるわけではなく、「専門職」以上の職位からが対象となる。例えば、技術論文を執筆したり、コンファレンスで発表をしたりといった、専門職ならではの仕事について、メンターに相談するそうだ。

メンターを利用する際は、「申請→MatchMake→計画立案→計画実行→実績確認」というプロセスに従う必要がある。申請のきっかけは「ルールの適用」「所属長による支持」「メンティー自身の希望」などいくつかあるという。また、MatchMakeとは、メンターを選定するステップだが、メンター候補はメンティー自ら選択することができる。メンターが自己紹介している「Blue Page」というWebページがあり、メンティーは任意の条件をもとに同ページを検索することで自分に適したメンターを探し出すことが可能なのだ。菅原氏もメンターを務めているが、面識のない中国やインドの技術者からメールやチャットを介してメンターの依頼を受けて驚いたそうだ。

メンターが自己紹介しているWebページ「Blue Page」。このページを頼りに、メンティーはメンターを探す

Blue Pageとは別に、COSMOSでも独自にメンターを登録したデータベースを持っている。同データベースには男性のメンターも登録されているとのこと。

COSMOSが提供しているメンターのデータベース。「あと○人対応可能」といった親切なコメントも見られる

同氏は会社が用意しているプログラムに限らず、インタビューや勉強会など、「メンタリングの機会はどこにでも転がっている」と指摘した。自身の例として、米国のセールスのトップとのインタビューについて話してくれた。初対面のトップとのインタビューということで突っ込んだ内容を尋ねられることはなかろうと考えていたところ、開口一番、「オンデマンド時代におけるSEはどのような組織で活動していくべきか」という質問を受けて驚いたのだという。同時に、同社のテクニカルリーダーとして、「時代にマッチした技術者としてどのようにあるべきか」を常に考えていなければならないことを実感し、今日まで教訓としているそうだ。

実際、技術者ではなく編集の立場ではあるが、今回の話を聞いて、「自身のキャリアをどのように考えているのか」「キャリアアップのために自分がどのような努力をしているか」などを振り返るよい機会となった。自社にメンタリング制度はある方はもちろんのこと、自社にメンタリング制度がない方も身の回りのチャンスを生かし、キャリアアップのためにメンタリングを取り入れてみてはいかがだろう。