マイクロソフトは、2008年7月にコンシューマー事業を一新、コンシューマー&オンライン事業部を新設し、事業部のトップにEMIミュージック・ジャパンの堂山昌司氏を迎え入れた。同10月には、従来はPC向けブランドだったWindowsを再定義し、Windows Vista、Windows Live、Windows Mobileを連携させた新ブランド戦略「Windows Life Without Walls」をスタートさせた(関連記事)。グローバルなこの新ブランド展開の中で、日本市場向けには「フォトシェアリング」をテーマにした第一弾のユーザー向けシナリオを発表し、12月にはWindows Liveの機能を強化させた新サービスを開始したところだ。社内的には新体制を整え、新ブランド戦略や新サービス展開の準備や告知で、瞬く間に過ぎた半年間であっただろう。2009年は「Windows」のビッグブランドをコアにした新サービスの本格展開の年となる。マイクロソフト 代表執行役副社長コンシューマー&オンライン事業部担当 堂山昌司氏に半年を振り返っての話や2009年のWindowsブランド戦略について話を伺った。

マイクロソフト 代表執行役副社長 コンシューマー&オンライン事業部担当 堂山昌司氏

2008年はマイクロソフトの強さを改めて感じた年


――マイクロソフト執行役副社長に就任後、半年間を振り返っていかがでしょうか

堂山氏 6カ月という時間が、あっと言う間に過ぎました。きちんと組織を作り上げ、本社と方向性の確認をしながら、ひとつずつ粛々と新たなサービスの導入を行ってきたというところです。この間、世の中の急激な状況の変化もありましたが、社会の経済環境が悪化しているからと言って会社の経営状況が急におかしくなるということはない。どちらかというと社会的には様子見という風潮もある中で、マイクロソフトでは予定している新規の商品投入スケジュールに変更が生じるわけでもなかった。ひとつの強い信念を持っている会社は本当に強いなと感じています。

――マイクロソフトの信念とは?

堂山氏 ビル・ゲイツが掲げる「全世界の人々にPCが一台ずつ渡ることで生活が豊かになる」という思いです。PCを一家に一台ではなくて1人に一台の環境にしていくことです。これまで、PCの良さをコンシューマーに充分伝えきれていなかったと思います。コンシューマーに向けたグループ(部署)を作り、やはりきちんと事業を進めることによってPCの数もOSも増やして行くという思いでいます。

――以前に嘱した企業との違いは感じられましたか?

堂山氏 EMIとは全部違うかな。とは言っても(EMI以前に在籍した)ソニーとは似ている。事業部が強い、カリスマ経営者がいる、技術力がある、マーケティングは上手いような下手なような、驕りもあるし、カルチャーもある……。違和感はないが、ソニーの時は本社が日本で、日本市場を一番に考えてくれるという状況だった。その違いは大きく、マイクロソフトでは技術リソースを(日本向けに)割いてもらうために倍の努力をしなければならない。やはりローカルの部分はローカルでやるべきだと思っていて、(日本の)開発チームが欲しいというのは本音にある。今あるものを一生懸命やっているだけ、組み合わせているだけでは駄目だと考えています。

Windowブランド新戦略はどう進んでいるか


――Windows Life Without Walls戦略の展開はどうでしょう。難しいと感じられている部分はありますか?

堂山氏 マイクロソフトにとって、「Windows Life Without Walls」のような生活に密着したテーマをメッセージにできたのは、久々のことだと感じています。コンシューマー向けのライフスタイルをベースにして、そこにサービスがどうやって貢献していけるのか。例えば、プールに飛び込んだ瞬間の感動(※)をどう伝えるのかを、これまではソフトウェア屋として考えていたのですから、(生活に関連したサービスを提供するという面では)まだまだ弱いところはいっぱいある。日本での展開に関して言えば、Windows環境でもWindows Mobileでも、(日本向けに開発するという点で)一番にプライオリティを置いてもらえているかと言えば、そうではないが、この苦しみは仕方がないと思っています。日本のマーケットは、グローバルの中でどのような位置づけにあるのか、また日本特有のコミュニケーションセクター、あるいは情報通信産業分野での(外資企業の)難しさといったものの障害を取り除いて、まずは「できる」というところを証明していかなければならないと考えています。

――ここでのコメントでは、2008年10月の新ブランド戦略発表後、もっと提供するサービスの内容を充実させていきたいという強い思いと、また、すでに打ち出しているフォトシェアリングのサービスについても、そのよさをアピールしきれていないというもどかしさのようなものを感じた。

※「Windows Live Mesh」のコンセプトを示すために作られた同社のデモ映像では、すでにある同社の製品とサービスをシームレスに繋ぐことで実現可能だという「フォトシェアリング」のシナリオを見せている。プールに飛び込んだ子どもを写真で撮影し、他の場所にいる家族の携帯電話やゲーム機(Xbox)、父親の会社のPC等にシンクロさせて表示するといったものを示す。