地球上には未だ人類に発見されていない生物が数多く存在するというが、「進化論」で有名なガラパゴス諸島で新たな陸イグアナが見つかったと聞けば、さすがに驚きを禁じ得ない。かのチャールズ・ダーウィンもその姿を目にすることがなかったサーモンピンクのイグアナ「ロサダ(rosada)」(正式学名が決まるまでの仮名、スペイン語で「ピンク」の意味)が、1月5日、新種認定された。5日発売の学会誌『Proceedings of the National Academy of Sciences』で最新の論文「An overlooked pink species of land iguana in the Galapagos(ガラパゴス諸島の知られざるピンクの陸イグアナ)」が発表されている。リードサイエンティストはイタリアのローマ・トル・ベルガータ(Rome Tor Vergata)大学のGabriele Gentile氏。
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ウォルフ火山には、黄色い体色をもつ陸イグアナが生息しているが、それらとこのピンクイグアナ・ロサダの間には体色以外にもさまざまな違いがある。せっかく見つかった新種のイグアナ、すぐに絶滅ということにならなければよいのだが…… |
ロサダは体長約1m、重量約12kg。ピンクの体に背中の黒いストライプが特徴だ。1986年、イザベラ島の国立公園レンジャーによって初めて発見されたが、その後、数回程度しか目撃例がなかった。今回、Gentile氏が率いる同大学のチームによって初めてロサダについて学術的な研究がなされ、遺伝子分析により、約570万年前に他の陸イグアナから分岐して進化したことが判明した。だが現在の生息地であるウォルフ火山は35万年前に形成された若い火山であり、またイザベラ島が形成されたのも約500万年前ということから、ロサダがどこからやってきたのかは謎のままだ。
1835年、ビーグル号でガラパゴスに着いたダーウィンは、この地でイグアナやフィンチ(小型の鳥)の研究を行い、「進化論」を着想したと言われているが、ウォルフ火山は訪れておらず、したがってロサダの記録も残っていない。これまで、陸イグアナと海イグアナが分岐したのが1,000万年前、そしてガラパゴスの陸イグアナが多様に進化を始めたのが100万年前とされてきたが、ロサダが570万年前に登場したという事実は「空白の900万年」を埋める重要な手がかりとなりそうだ。
Gentile氏は論文で「2年間の研究で我々が確認したロサダの個体数は40以下、おそらく100体以下しか生息していないだろう」としており、新種に認定されたばかりのピンクイグアナが、すぐにも絶滅してしまう危険性があることを指摘している。
(イラスト ひのみえ)