2008年も年の瀬だが、年明け早々の1月初旬には今年もラスベガスでInternational CESが開催される。Consumer Electronics Show(CES)は年次開催のトレードショウ、家電業界にとってはいわば一大イベントだ。家電メーカー各社は世界中から集まる関係者に向け、新製品や新技術を惜しみなく披露する製品発表会の場でもある。ここで紹介される新技術は、今後数年の業界の動向を占う指針ともなる。

だが事前のレポートのように、金融危機を受けて大規模なITイベントは縮小傾向にあり、今回開催されるCES 2009もまた例外ではない。大手メーカーらも出展規模縮小や撤退の兆候がみられ、ここでもまた世相を反映した風景が見られそうだ。一方で家電メーカーらには、経済情勢を反映した戦略転換が迫られることになる。バブル経済を前提にした製品戦略や販売戦略では早々に行き詰まる可能性が高く、コスト削減を含むリストラプランをにらみつつ、生き残りをかけて他社との差別化を図らなければいけない。まずは過去数年の家電各社の動向をみていこう。

今年も1月初旬に開催されるInternational CES 2009。家電メーカーらの次の一手は?

過去数年のCESで見受けられたのは、大手メーカーらによる大画面TV開発競争だ。「大きいことはいいことだ」とばかりに大画面化が進み、近年では100インチオーバーの大画面TVをどこよりも早くいかに商用ラインに乗せるかが争点となっている。シャープやパナソニックの日本勢をはじめ、SamsungやLGの韓国勢も加わり、1インチ単位で「どちらがより大画面なTVを作れるか」という競争を繰り広げてきた。

一般的なユーザーであれば、30インチや40インチ台のTVで十分だと考えているだろう。何より設置場所の問題があるからだ。これは比較的居住スペースに余裕のある米国の一般家庭でも変わらない。ではこうした100インチクラスのTVは誰が購入しているのだろうか。経済紙の米Wall Street Journalは12月8日(現地時間)付けの「TV's Next Big Things」記事の中で、大画面TVの販売先として「企業と富裕層」と2つの主要顧客を挙げている。同紙にコメントを寄せている米PanasonicシニアバイスプレジデントのBob Perryによれば、同社はすでに103インチのプラズマTVを定期的に何千台も販売しているという。販売価格はおよそ7万ドル(約630万円)で、販売先は企業ユーザー、あるいは富裕層が中心だという。また本記事では触れられていないが、こうした富裕層の中には原油バブルで沸いた産油国やロシア、新興国などの富豪らが含まれるとみられる。高額製品の購入層は非常に限られるが、販売金額や利幅は非常に大きい。とかく価格競争になりがちな消費者家電の世界で、これらは貴重な顧客だ。

パナソニックがCES 2008で発表した世界最大の150インチ型プラズマTV。従来の液晶TVの最大サイズだった100インチクラスから頭一つ抜きんでている。昨今の大画面化競争の先鋒ともいえる

通路を挟んで対峙するシャープとSamsung。どちらも大画面液晶TVを前面に押し出している

だが一方で、TV画面サイズ拡大での過当競争は、次のブレイクスルーを見つけられない家電業界の手詰まり感の象徴にも感じられる。家庭内ネットワーク、無線通信を使ったHD画像転送、Blu-rayなどの高画質記録媒体、コンテンツホルダーと連携した配信サービスなど、これまでのCESではリビングルームを中心にさまざまな新技術やサービスが提案されている。だがメーカーの思惑ほどには市場が広がっていないのが現状だ。大画面TVの開発は技術力のアピールにもなるし、前述のように高価であっても購入するような固定層が存在する。こうした技術力が必要な製品は、低価格を売り物にした新興メーカーとは競合しにくいという理由もある。