東京工業大学(東工大)は12月2日、報道陣に対し、同大学のスーパーコンピューティング(スパコン)・グリッドシステム「TSUBAME (Tokyo-tech Supercomputer and UBiquitously Accessible Mass-storage Environment)」の最新状況を公開した。

左から、NVIDIAの共同創設者であるジェン・スン・フアン(Jen-Hsun Huang)社長兼CEO、東工大 学術国際情報センター 教授 松岡聡氏、同学術国際情報センター長 渡辺治氏、同学術国際情報センター 教授 青木尊之氏

東工大のTSUBAMEシステムがNVIDIAのGPUの大量増設と、Xeonクラスタの追加により「TSUBAME1.2」にアップグレードする計画を進めていることは、以前Hisa Ando氏のレポートにて報じたが、今回の公開はこれの完成披露となる。なお、同日、同大学では「CompViewシンポジウム2008」が開催され、NVIDIAの共同創設者であるジェン・スン・フアン(Jen-Hsun Huang)社長兼CEOが特別講演を行っており、同公開の席にも登壇している。

TSUBAMEについて説明を行う松岡聡教授

TSUBAME1.2では、NVIDIAのGPUボード「Tesla 10p」が680枚、既存ノードに追加される形で性能強化が施されており、LINPACKを用いたTop500では77.48TFlopsを達成しているが、「実際は85TFlopsくらいは出ていたが、時間切れとなり、あの数値となった」(東京工業大学 学術国際情報センター 教授 松岡聡氏)という。

すでにスパコンは、RoadRunnerやJaguarが1PFlops超えを達成しており、今後、世界中で数ペタ~数十ペタクラスのスパコンが登場することが予測される。

東工大のTSUBAMEに関しても松浦教授は「我々も追随していきたいが、消費電力/性能比が問題になってくる。大学からは1MW以上の電力を消費しないでもらいたいと通達されており、簡単にシステム数を増やして処理量を増やすことが難しい」とし、消費電力の割りに高いピーク性能(1TFlops)と高いメモリバンド幅(100GB/s以上)を持つGPUを用いることで、ピーク性能が求められる計算と、メモリバンド幅に起因する計算、2つの計算課題に対してアクセラレーションができるようになったと語る。

GPUの持つピーク性能とメモリバンド幅で計算速度の向上が可能となる

「GPUはクラシカルなベクトルHPCに似ている。これは、近い将来コモデティHPCでのベクトル計算機の復権となることを意味している」(同)とする。そのため、次世代のTSUBAMEにもGPUは搭載していく方針であり、「GPUがベクトル演算の主流になっていく」(同)との見方を示している。

実際の増設は、Hisa Ando氏のレポート中にもあるように、TSUBAME1.0を稼働させたままラックの隙間に実装するという手法がとられている。なお、電力に関しては、工事を行って、対応したとのことである。