50万円を切るミクスドシグナル・オシロ
ミクスドシグナル・オシロスコープ(ミクスドシグナル・オシロ)とは、ロジック・アナライザの基本機能を組み込んだデジタル・オシロスコープ(デジタル・オシロ)だ。ミクスドシグナル・オシロを使うと、ロジック信号(デジタル信号)とアナログ信号の両方をまとめて観測できるので、組み込み機器の開発者にとっては非常に有難い。
ただしこれまで、ミクスドシグナル・オシロの価格はあまり安くはなかった。デジタル・オシロでもミッドレンジのシリーズにミクスドシグナル・オシロが用意されていたため、本体価格で100万円を超えるのが普通だった。
それが最近になり、いささか事情が変わってきた。2008年10月に横河電機が、本体価格が72万8000円と低い品種「DLM2024」を含めたミクスドシグナル・オシロ「DLM2000シリーズ」を発売したのだ。またアジレント・テクノロジーも、ミクスドシグナル・オシロ「MSO6000シリーズ」に本体価格84万5665円の品種「MSO6012A」を用意している。
そして日本テクトロニクスが、50万円を切るミクスドシグナル・オシロを発売した。同社は11月17日に報道関係者向けの新製品発表会を東京で開催し、本体価格が46万5000円と低価格な品種「MSO2012」を含むミクスドシグナル・オシロ「MSO2000シリーズ」を発表した。ローエンド(またはエントリ)・モデルのデジタル・オシロ新製品「DPO2000シリーズ」と併せての発表である。DPO2000シリーズにロジック・アナライザの基本機能を追加したのがMSO2000シリーズとなっている。
ベンダ | 日本テクトロニクス | 横河電機 | アジレント・テクノロジー | 日本テクトロニクス |
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製品名 | MSO2012 | DLM2024 | MSO6012A | MSO4032 |
最大サンプリング速度 | 1Gサンプル/秒 | 1.25Gサンプル/秒 | 2Gサンプル/秒 | 2.5Gサンプル/秒 |
周波数帯域幅 | 100MHz | 200MHz | 100MHz | 350MHz |
アナログ入力 | 2チャンネル | 4チャンネル | 2チャンネル | 2チャンネル |
デジタル入力 | 16チャンネル | 8チャンネル | 16チャンネル | 16チャンネル |
波形更新速度/td> | 最大5000回/秒 | 最大2万回/秒 | 最大10万回/秒 | 最大3万5000回/秒 |
波形メモリ(標準) | 1Mポイント | 1.25Mポイント(繰り返し波形のとき) 6Mポイント(単発波形のとき) |
2Mポイント | 10Mポイント |
ディスプレイ | 7型WQVGAカラー液晶 | 8.4型XGAカラー液晶 | 6.3型XGAカラー液晶 | 10.4型XGAカラー液晶 |
デジタル・プローブ | 標準装備(8チャンネル×2ポッド) | オプション(トグル周波数100MHz品が8万円) | 標準装備(8チャンネル×2ポッド) | 標準装備(8チャンネル×2ポッド) |
本体寸法 | 幅377mm×高さ180mm×奥行き134mm | 幅226mm×高さ293mm×奥行き193mm | 幅399mm×高さ188mm×奥行き282mm | 幅439mm×高さ229mm×奥行き137mm/td> |
本体重量 | 3.6kg | 4.2kg | 4.9kg | 5kg |
価格(税抜き) | 46万5,000円 | 72万8,000円 | 84万5,665円 (参考価格、11月17日時点) |
106万円 |
備考 | デジタル入力使用時は アナログ入力は3チャンネルとなる |
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ミクスドシグナル・オシロスコープの製品例。同じシリーズ内で価格が低い品種を選び、まとめた |
MSO/DPO2000シリーズの共通仕様
MSO/DPO2000シリーズの共通仕様はサンプリング速度が最大1Gサンプル/秒(全チャンネル)、波形メモリが1Mポイント(全チャンネル)、波形更新速度が5000回/秒、7型WQVGA(480×234画素)のカラーTFT液晶ディスプレイなどである。本体寸法は幅377mm×高さ180mm×奥行き134mm、本体重量は3.6kg。エントリ・モデルらしく、外形寸法はコンパクトにまとまっている。
報道関係者向けの新製品発表会でMSO/DPO2000シリーズの概要を説明する米TektronixでVSPL Marketing and Strategy Directorを務めるRoy Siegel氏。MSO/DPO2000シリーズの開発にあたっては、100組を超える顧客にインタビューして要望を汲み取ったと述べていた |
周波数帯域は200MHzまたは100MHz、アナログ入力数は4チャンネルまたは2チャンネルである。周波数帯域とアナログ入力数の違いで各シリーズ3品種、合計6品種を用意した。価格(税抜)はMSO2000シリーズが66万8,000円~46万5,000円、DPO2000シリーズが48万5,000円~33万5,000円である。
MSO/DPO2000シリーズの特徴はいくつかある。波形メモリは1Mポイントと、エントリ・モデルのデジタル・オシロとしては長い。波形更新速度は最大5000回/秒とこれもエントリ・モデルのデジタル・オシロとしては高い。
そして上位品種であるMSO/DPO4000シリーズおよびDPO3000シリーズと同じ波形検索機能「Wave Inspector」を搭載した。「Wave Inspector」では専用の操作ノブと操作ボタンによってイベントを検出したり、特定個所にブックマークを付けたり、観測波形をズーム/パンしたり、スクロールを自動化したりする。これらの操作はアナログ入力とデジタル入力の両方に対して有効なので、組み込み機器開発におけるデバッグ作業の負担を大幅に軽くすると期待できそうだ。