女性の認知度が向上

これまでREGZAの認知度は男性に圧倒的に高く、女性の認知度との差は30ポイント近くもあったという。「この年末商戦だけを見れば、"福山効果"もあり、女性の認知度の方が高いのではないか」(岡田部長)というほどの成果である。

屋外広告などの施策も実施

販売店からも、"福山効果"を裏付ける声があがっている。「いままで女性にはREGZAの認知度がなかったが、夫婦揃って来店して、気にいってもらっている」(広島の店舗)、「REGZAのテレビCMを見たお客様が、福山のテレビはどれですかと聞きに来て、売れた」(都内の店舗)、「若年層から40代ぐらいまでの女性のお客様に関心を持っていただいている」(都内の店舗)、「テレビでやっているCMを見せてほしいという声がある」(北海道の店舗)というような具合だ。

福山雅治氏を採用したREGZAの展示パネル

実際、カタログは例年の1.3倍刷ったが、福山氏が表紙になっていることもあって、無くなり方は例年以上だ。「増刷しなければならないかもしれない」と、岡田部長は苦笑する。

「この年末商戦を機に、一般層や女性層にも一気に認知を高め、美しいテレビといえばREGZA、メジャーブランドといえばREGZAといったイメージの確立に取り組みたい」(岡田部長)と意欲的だ。

ラインナップの足並みを統一

もう1つ、見逃せないのが、今年の年末商戦では、すべての製品ラインアップを一新するといった、東芝の液晶テレビとしては、初めての取り組みを行ったことだ。

これまでは1年の製品ライフサイクルだったため、秋に発売する製品、春に発売する製品といったように、製品ごとにライフサイクルのずれがあり、これが商戦期における製品の一新感を阻害していた。

だが、この年末商戦向けモデルでは、すべての製品を半年ごとのモデルチェンジとしたことで、足並みを揃えて全モデルの一新が可能になったのだ。これによって、新製品の登場感を打ち出せ、福山効果と相まって、店頭展示スペースが、前年に比べて拡大しているという。「島展示として、複数のREGZAを展示してくれる店舗が増加している」(岡田部長)。

半年間でのモデルチェンジに向けては、深谷の開発、生産部門、米国および欧州のソフトウェア部門、アジアのODMといった3極において、体制の最適化を行い、短い開発サイクルにも対応できるようにしたという。

大角事業部長は、「2008年度下期の国内液晶テレビ市場において、20%のシェア獲得を目指す。また、国内26型以上の液晶テレビ市場においては、25%以上のシェア獲得を見込む」と意欲を見せる。

2010年度でグローバル液晶テレビシェア10%以上、2008年度下期国内液晶テレビ市場シェア20%を狙う

「26型以上の市場における現在のシェアは約21%。これを25%にまで引き上げるのは、簡単ではない。しかし、広告投資、商品への投資を積極化し、まずは日本において、目標達成の成果をあげていきたい」と、攻めの姿勢を強く打ち出した。

来年は海外ビジネスの強化にも乗り出す

東芝は、年末商戦においては、国内での液晶テレビ事業の拡大に投資を集中させている。だが、来年度以降、日本市場での事業基盤確立をスプリングボードに、海外での事業をさらに加速させていく姿勢を見せる。

大角事業部長は、「2010年度にはグローバル液晶テレビ市場でシェア10%以上を目指す」とする。同社の薄型テレビ事業において、8割の事業構成比を占めるのが海外。ここにおいて、現在8%のシェアを着実に引き上げていく考えだ。

すでに上期実績で、全世界の液晶テレビ全体の台数伸張率が37%増であるのに対して、東芝は54%増とそれを上回る実績になっている。また、米国では市場全体の39%増に対して94%増、ドイツでは57%増に対して38%増と、それぞれ高い成長率を維持している。

「海外でのプレゼンスは着実に向上している」と大角事業部長は語る。とくに、今後の重点市場としているのが米国だ。

「景気の低迷が指摘されているものの、米国における46型以上の大画面モデルは前年比2倍の伸びとなっている。ここに対して、付加価値型大画面モデルの積極投入とともに、ODMを利用したローコストオペレーションでのモノづくりも鍵になるだろう。来年春の新製品投入期にあわせて、今回の日本と同じように積極的な広告展開を計画し、市場での存在感をさらに高める」とする。

東芝のテレビ事業は、2008年度上期に黒字化した。2007年度下期は赤字だったものの、「2007年度下期から2008年度上期という1年間トータルでは黒字になる。2008年度下期は、厳しい経営環境や為替の影響、売価ダウンなどの要因もあるが、黒字化を維持し、いまの黒字基調を継続させたい」とする。

2008年度における液晶テレビの全世界の市場規模は、年間1億台が見込まれていたが、一部関係者の間では、9500万台程度に留まるのではないかという見方も出ている。また、今後の成長に対しても厳しい見方が出始めているのも確かだ。

それにも関わらず、東芝の出荷計画は、2008年度には700万台突破、2010年度には1300万台を目指す。2006年度からの年平均成長率は49.5%と、業界全体の29.7%を大きく上回る。こうした成長を達成するには、その第1歩として、まずは、日本におけるこの年末商戦の成果が試金石となる。

年末商戦が本格化する前の前哨戦では、順調なスタートを切ったのは確かである。これを確実な成功につなげ、来年度以降の海外展開につなげたいところである。