セールスフォース・ドットコムとオービックビジネスコンサルタント(以下OBC)は、OBCのERPパッケージ「奉行V ERPシリーズ」とセールスフォース・ドットコムの「Salesforce CRM」を連携させ、インターネットを通じて機能、サービスを供給するSaaS型で、中堅・中小企業向けに提供していくことで合意した。両者の強みを融合させ、中堅・中小企業へのいっそうのSaaS普及と、CRMとの連携による、奉行シリーズの利便性向上を図る。

今回のソリューション展開では、テラスカイが開発したSaaS型システム連携サービス「SkyOnDemand」を用い、「奉行V ERP」と「Salesforce CRM」との連携が実現した。 「SkyOnDemand」は、複数のコンピュータシステムを連携させ、統合化するEAI(Enterprise Application Integration)機能を備えており、社内システムの顧客データとSalesforceの同期や、Salesforce上の受注データを社内システムにバックアップする場合などに、データ連携のためのシステム構築や、自社内のネットワーク設定変更は不要で、ファイアウォールを越えて、社内システムとSalesforceとの連携が可能になり、導入コスト低減化、導入までの期間短縮化ができるという。

さらに、「SkyOnDemand」と「奉行シリーズ」の連携アダプタを開発中で、奉行側のデータとSalesforceの相互作用がいっそう円滑化する。

奉行シリーズとSalesforce連携の基本構図

販売は、OBCのもつ全国3,000拠点、600社に達するパートナー企業を活かし、奉行シリーズとソリューションの展開、さまざま提案を行う。また、双方の営業案件の共有を促進し、セールスフォースはOBCの会計システムの既存顧客8万社に、OBCもセールスフォースの既存顧客に対し、ソリューションを訴求していく意向で、セールスフォースは今後、事業継続性維持のしくみなども提案、アプリケーションの幅を広げる。 連携ソリューションは、技術面では、NTTソフトウェア、ビーコンIT、日立ソフトウェアエンジニアリングなどの協力を得る。

拡販のためイベントして、OBCは今月から12月上旬まで「奉行フォーラム2008」を東京、大阪、名古屋など、全国25都市で開催、セールスフォース・ドットコムは、今回のソリューションをテーマにしたブースを出展する。

両者の強み活かし、中堅・中小企業に照準

セールスフォース・ドットコムの宇陀栄次社長(右)と、オービックビジネスコンサルタントの和田成史社長

セールスフォース・ドットコムの宇陀栄次社長は「OBCは国内のERPパッケージベンダーのリーディング企業であり、ぜひ提携したかった。この連携で、新しいITサービスが誕生する。国産ソリューションとグローバルのソリューション、クライアント・サーバ型とSaaS、DNAや形式が異なる両者が融合することにより、強いソリューションができる」と語った。

OBCの和田成史社長は「顧客管理、商談管理が、中堅・中小企業にとっても、大変重要な課題になってきている。経理、会計、財務のシステムとCRMの連携についての需要が出てきており、これに応えていきたい」と述べ、このようなシステムの導入について、コストや独自の技術力の点で課題を抱える中堅・中小企業を今回のソリューションで支援していく考えを示した。

今回の提携の主題として両社は「日本の中堅・中小企業の活性化に向けた新たな取り組み」を掲げている。セールスフォースの宇陀社長は「中小企業は日本の産業の宝とさえいわれる。中小企業にとって価値があり、信頼できるITサービスを提供したいというのが最大のポイントだ」と話す。同社は以前から、国内の中堅・中小企業への展開を注力する方針を明確にしてきたが、「奉行シリーズ」は、この領域への浸透を図るうえで有力な起爆剤となる。

OBCは、従来、DOS、Windows、クライアント・サーバ型と、ITの技術革新の波、その移り変わりを巧みに補足し、進化の流れに即した製品展開を実行することで、成長を続けてきた。同社は、成長のための新たな技術要素の有力候補としてSaaSに着目したようだ。

7-8年前には、現在のSaaSの「前身」といえるASP(Application Service Provider)が一時脚光を浴びたが、さまざま条件が整わず、広がらなかった。同社の和田社長は「いまでは、ネットワークが強化され、セキュリティの点でも安心、安全な環境が確保され、しかも広帯域になり、環境が大きく変わった」と指摘、「クラウドコンピューティングの時代といわれるなか、ネットワークに『奉行シリーズ』が溶け込んでいくのが、次のイノベーションだ」として、SaaSに積極的に対応していく姿勢を明らかにした。