相次ぎ打ち出される省エネ政策

まず、政策面の取り組みを見てみよう。何も緑色ITに的を絞ったものではないが、背景としては重要である。

注目されるのは、中国が大元のエネルギー源の"緑化"を進めていること。風力や太陽光など再生可能エネルギーが発電のエネルギー源に占める割合を現状の8.5%から2010年に10%、2020年に15%へ引き上げる計画だ(日本は2014年までに1.6%の計画)。実際、風力発電能力は世界5位で伸び率がトップ。近い将来、ドイツ、スペインなどこの分野の先進国に肩を並べると見られる。

また、今年に入って、改正「省エネルギー法」を施行し、省エネ目標を地方政府に課し、企業に対する報告義務、罰則規定も強化。グリーン調達制度もすべて政府機関に適用され始めた。さらに、中国は従来、産業振興や物価抑制からエネルギー価格を統制していたが、今後は国際価格に合わせて引き上げていく意向と言われる。これも省エネに拍車をかけそうだ。

最近、上海や北京のローカルニュース番組を見ていると、政府の意向を反映してだろうが、必ず"環保"(環境保護)の話題が盛り込まれている。市民生活でも、主要都市ではレジ袋が有料になり、北京では五輪後も引き続き車両規制が続く。筆者の主観では、中国社会の中にも、緑色ITのベースとなる環保に対する社会コンセンサスは徐々にだが形成されつつある。

米ベンダ主導で進む大手企業の緑色IT

こうした社会状況は、ベンダが緑色ITを取り組む上で追い風になる。中国のサーバ市場で50%超の台数シェアを持つち、ハイエンド市場では圧倒的に強いIBM、HP、Sunといった米コンピュータベンダは、本国や日本で展開しているのと同じマーケティングを中国で展開し始めている。

例えば、Sunは中国最大の携帯電話キャリア、中国移動と2008年に納入する製品・サービスで約3400万ドルの契約を結んでいるが、データセンタの効率化を実現するSunの「Eco Innovation」により、中国移動がIT基盤で要している電力コストを半減できるとしている。"半減"とは大げさな印象も受けるが、4億1000万人以上の加入者を抱える中国移動のデータセンタは消費電力も相当なもの。それが10、20%でも削減されるなら、それだけでも意義深い。

IBMは2007年末、中国ITベンダとのジョイントでLinux搭載メインフレーム「Linux On System z」のサポートセンタを中国で初めて深センに開設している。Linux On System zと言えば、IBMのグリーンITプログラム「Project Big Green」における戦略製品。中国でサーバ統合ニーズが高まることを見越したものだろう。IBM自身、中国内で数々の大型データセンタの建設、サービス提供を手がけており、ニーズは掴みやすいはずだ。

中国には、日本での富士通・日立・NECに当たるような民族資本(国産)の総合コンピュータベンダが不在。中国の政府機関や金融、通信など大手企業の多くは、米ベンダ主導でIT化を進めている。そのため案外、緑色ITの浸透は日本の場合よりもスムーズなのではないかと見ている。