シード・プランニングは先月18日、排出権取引 最新ビジネス事例研究『第1回 CO2排出権取引セミナー』を開催した。 シード・プランニングでは、今後も継続的に環境問題に関するセミナーを開催していく方向性であり、次回は11月下旬を予定している。

国立環境研究所 社会環境システム研究領域 環境経済政策研究室長 日引聡氏

セミナーで最初に登壇したのは、独立行政法人国立環境研究所 社会環境システム研究領域 環境経済政策研究室長の日引聡氏。日引氏は、排出権取引の効果について、まず「省エネ投資の促進」を挙げた。これは、エネルギー効率の悪い企業は、排出権を購入せざるを得なくなり、そのコストは価格に反映するため、積極的に省エネ投資を行うようになるというものだ。そのほか、太陽光など自然エネルギーへの転換の促進、郊外から駅前への立地選択変更、環境ビジネスの推進、排出権取引などの金融ビジネスの活性化などを挙げた。

続いて日引氏は世界の排出権取引の状況について説明。世界的にはEUが先行しており、すでに第1フェース(2005年~2007年)を終え、2008~2012年の第2フェーズに入っている。第1フェーズでは、エネルギー産業、金属産業、鉱業を対象に、二酸化炭素のみが対象にされたが、第2フェーズでは、新たに化学やアルミニウムの産業を追加、対象ガスもメタン、一酸化二窒素、フロン類等が追加されている。

そして、第1フェーズは、目標である2005年比で+8.3%(期間平均)という数字を大きく上回る、2005年比で+0.3%という実績をあげた。排出権の価格が低いにもかかわらず、目標を超える削減が生じた要因について日引氏は、EUでは目標値が第1フェーズでは緩くても、第2フェーズ以降厳しくするなど、長期的な政策が示されているため、企業は20年先、30年先を見据えて投資が行える点を挙げた。

その一方で日本は行政の対応が遅く、具体策が欠如しており、将来の政策の見通しがたたないことが、企業の省エネに対する投資リスクになっていると述べた。そして、このままでは国際的な信用や地位の失墜を招くと警告し、そのためには、政治のリーダーシップが必要だと語った。

また、省エネに消極的な大統領に対し、州政府が積極的に動いたアメリカの例や、世論により政府に方向転換させたオーストラリアの例を挙げ、地方自治が果たす重要性や、国民や世論の果たす役割の大きさを訴えた。