日本ヒューレット・パッカードは3日、同社が提供する「HP DCT(Data Center Transformation) ソリューション」の最新状況を発表。同ソリューションのポートフォリオの一部に位置づけられる「HP DCT エクスペリエンス・ワークショップ」および「HP データセンター・コンソリデーション(DCC)・サービス」の2つのサービスについて詳細を説明した。

自社プロジェクトから生まれたソリューション

日本HP コンサルティング&インテグレーション統括本部 ソリューション戦略本部 ソリューション戦略2部 内田恵氏

日本HP コンサルティング&インテグレーション統括本部 ソリューション戦略本部 ソリューション戦略2部の内田恵氏は、まず、同ソリューションの誕生背景について紹介した。

氏は、大企業におけるITシステムの現状に触れ、「部門やプロジェクトごとに個別に構築/管理されているため、サイロ化が進み、複雑な構造になっている」と説明。運用形態もばらばらで、運用コストが高いうえ、変化に対する柔軟性に乏しく、「抜本的な見直しが必要」だと説いた。

そのうえで、かつては米HPもそういう状態だったことを紹介。全社を挙げてデータセンター統合(Data Center Cosolidation: DCC)に取り組んだ結果、「85箇所のデータセンターが6つに統合され、年間10億ドルのコスト削減、処理能力80%向上、エネルギーコスト60%削減などの成果が得られるようになった」(内田氏)という。

HP DCT ソリューションは、その活動の中で得られたノウハウを体系化したもので、氏は「成功事例に基づく実践的なコンサルティングサービスになっている」と強調した。

運用管理/ビジネスへの影響も考慮したソリューション

HP DCT ソリューションの最大の特徴は、ファシリティやインフラストラクチャなどの技術面のみならず、管理や運用、ビジネスへの影響までも考慮に入れ、戦略策定から移行、運用までをトータルに進めていく点にあるという。

内田氏は、以下のような概念図を掲げ、「『マネジメントと運用』『アプリケーションと情報』『テクノロジーインフラストラクチャ』『ファシリティ』の4つのスコープに対して、『戦略』『設計』『移行』『運用』『継続的改善』の5つの軸でソリューションを展開していく」と説明。

HP DCT ソリューションの概念図

その詳細なサービスとして、以下のようなポートフォリを用意していることを紹介した。

HP DCT ソリューションのポートフォリオ

これらのうち、今回の説明会で取り上げたられたのが、「HP DCT エクスペリエンス・ワークショップ」と「HP データセンター・コンソリデーション・サービス」である。

手足を動かしながら2~3時間で合意形成

日本ヒューレット・パッカード コンサルティング・インテグレーション統括本部 エマージング・ソリューション部 シニアソリューションアーキテクト 森浩徳氏

HP DCT エクスペリエンス・ワークショップは、その名のとおり、「ワークショップ形式で議論を進め、プロジェクトのロードマップや方向性を決めるサービス」(日本ヒューレット・パッカード コンサルティング・インテグレーション統括本部 エマージング・ソリューション部 シニアソリューションアーキテクト 森浩徳氏)である。以下の10の視点で検討を進めていく。

  • Setting the Scene: なぜデータセンタ統合(DCC)が必要か、背景はどうなっているのか
  • Governance: 現状のガバナンスはどうなっているのか、今後どうするべきか
  • Transformation Journey: (多くのプロジェクトが関連しながら同時に進行することになるが)全体像はどのようになるか
  • Program Management: 各プロジェクトをどのように束ね、どう進めていくか
  • Business Outcomes: ビジネスにどのような影響を及ぼすか
  • Facilities Transformation: ファシリティをどう変えるか
  • Infrastructure Transformation: インフラストラクチャをどう変えるか
  • Application & Information Transformation: アプリケーションと情報をどう変えるか
  • Management Transformation: 運用管理をどう変えるか
  • Organization Change: 組織をどう変えるか

ワークショップ会場では、上記10項目を検討する場所が個別に設けられ、考え方を示すパネルやボードを見ながら、コンサルタントとともに関係者全員で議論を進めていく。

上記のようなパネルやボードを各所に配置し、移動しながら議論を進めていく

このワークショップにより、通常は10週間程度かかる合意形成などの作業が、わずか3~4時間(HP側で行う準備/分析作業を含めても5週間程度)で終えられるという。

既存資産の"発見"サービスも

一方、HP データセンター・コンソリデーション・サービスは、次の4つのサービスによって構成される。

  • DCC 戦略策定サービス
  • DCC ディスカバリ・サービス
  • DCC デザイン・サービス
  • DCC 移行サービス

まず「DCC 戦略策定サービス」で、戦略立案やフォーカスエリアの優先付けを行い、CIOの予算承認に必要な資料を作成する。この段階では成熟度モデル等を用いて現状とゴールを設定。現実と目標の間のギャップを視覚化し、必要な作業を洗い出していくという。同時に「DCC ディスカバリ・サービス」により、さまざまなツールを用いて社内に存在するITシステムを自動的に検出。既存の資産を正しく把握し、見落としをなくしていく。

DCC 戦略策定サービスでは、成熟度モデルを用いてゴールを明確化

その後、「DCC デザイン・サービス」、「DCC 移行サービス」により、設計、移行作業を進めていく。この際、PMO(Project Management Office)を設けるなどの組織体制にもアドバイスを送るうえ、さまざまなツールを用いて進捗状況やプログラムガバナンスの遵守状況のトラッキングも行っていくという。

「PlayBook」でノウハウを体系化

以上のようなHP DCT ソリューションはワールドワイドで展開されており、「PlayBook」と呼ばれる社内向けのマニュアルも用意されている。森氏は「同マニュアルは各国からのフィードバックを受け、随時変更が加えられている」と説明し、現在でも継続的に方法論をブラッシュアップしていることを強調した。

こうしたサービスを日本HPではすでに12の会社で提供している。現段階では、ヤマハ発動機をはじめとした製造業が中心だという。

なお、今回紹介されたサービスはそれぞれ独立して提供される。価格は、HP DCT エクスペリエンス・ワークショップが200万円前後、HP データセンター・コンソリデーション・サービスは案件に応じて個別に見積もられる。