デジタルコンテンツ 第2開発チーム チームマネージャー 中野貴弘氏

トヨタグループの商社、豊田通商は、今年2月に新たなEDIシステムの稼働を開始させ、サプライチェーン全体の最適化に向けた取り組みを加速させている。7月25日にアプレッソが開催した「DataSpider 事例紹介セミナー」で、SI担当企業であるデジタルコンテンツ 第2開発チーム チームマネージャー、中野貴弘氏が紹介したもの。

愛知県名古屋市に本拠を置く豊田通商は、トヨタグループの唯一の商社として、金属、機械・エレクトロニクス、自動車、エネルギー・化学品などをグローバルに展開する。一方、デジタルコンテンツは名古屋市を本拠とする企業で、組み込み開発、ソリューション開発を手がける企業。

豊田通商が導入した新システムは「TT-Stock」と呼ばれ、社内のホスト系システム、会計システムのほか、社外のサプライヤー、得意先との間でやりとりされるデータを連携させ、受発注業務や出庫業務をタイムリーに行うことができるようにしたシステム。豊田通商では、1990年代に導入したEDIで受発注業務を行っていたが、10年以上を経るなかで、需要予測と購買計画の間にズレが生じたり、生産計画と生産能力のバランスにねじれが生じていたりした。

そこで、「ビジネスのスピードに合わせた改善要求にこたえるため、既存のホスト系システムからの取得するEDIデータや、受発注業務で利用していたExcelなどのOfficeデータを連携。必要なときに警告を発し、リードタイムや在庫を適正化できるようなサプライチェーン・システムとして整備することにした」(中野氏)という。

豊田通商が導入したサプライチェーン・システムの全体図

開発は、2007年7月からスタートし、まずフェーズ1では、所要計画や予約注文情報などの「データ参照機能」、倉庫現在庫による「シミュレーション機能」、ホストからのEDIデータ受信、物流倉庫への引き当て指示データ送信などの「データ送受信機能」を整備。続く2007年末までのフェーズ2では、予約注文や確定注文から発注書を起票する「発注機能」や、入庫予定情報を元に仮想在庫を算出するなどの「シミュレーション機能の追加」、品目管理やユーザー管理といった「マスター機能」を整備した。

「まずデータ連携の基盤となる足回りを構築し、発注業務の負荷低減を図った。2008年からは、デリバリー業務についての負荷低減を目標に、自動引き当て機能などを実装していった」(同氏)

TT-StockによるEDIデータ取得のシステムフロー図

具体的には、2008年2月までのフェーズ3で、注文のプライオリティを考慮した自動引当処理や、未来日の出庫調整を可能にする機能などからなる「D-SIM」と呼ばれる対得意先向けシミュレーション機能を実装した。D-SIMのトップ画面では、在庫が不足した場合に、不足発生日をカレンダーなどのアラート表示で確認できたり、未来日の出庫シミュレーションが可能になっているという。

その後、現在までに、対顧客向けの「O-SIM」と呼ばれる予約注文シミュレーション機能や、物流倉庫への返品指示機能、EDI情報のクリーニング処理の半自動化機能なども追加。中野氏によると、O-SIMは、予約注文情報を起点としたシミュレーションであり、本来保持すべき在庫数を把握したり、製品リードタイムから外れる短納期注文などをアラート表示したりできるものという。

シミュレーション機能「D-SIM」の画面例

これらのシミュレーション機能や細かなアラート表示などによって、豊田通商では、受発注業務の細かな部分まで可視化できるようになり、リードタイムの短縮や在庫の適正化がより柔軟に行えるようになったとする。さらに、今後は、TT-Stockに分析シナリオやレポート機能を追加して、納期評価点を算出、月別の検収集計やフォーキャスト対比などを実現できるようにしたり、「P-SIM」と呼ばれる試作品シミュレーション機能を追加して、製品のテスト、調達計画、発注コントロールを行ったりする予定という。

なお、中野氏は、TT-Stockを構築するにあたり、アプレッソのデータ連携ソフト「DataSpider」を採用した理由として、大きく、開発工数の短縮と変化への柔軟な対応が可能であったことを挙げ、「EDIシステムやOffice文書などのデータを連携させたり、豊富なアダプタ群で既存資産をそのまま活用できたりするため、大幅なシステム変更は必要なかった」と語った。