韓国では今秋からIPTVで地上波テレビ放送などをそのまま放映する「リアルタイム放送」が可能になる見込みだ。それに向け、IPTV業者も本格的な動きを始めている。

IPTVの新しい時代が始まる

8月初旬、韓国で2007年末に国会を通過した「マルチメディア放送事業法(IPTV法)」の施行令案が議決され、現在は公布を待つばかりとなっている。

放送と通信の融合という、新しいサービスであるIPTV事業を規定する法律として、IPTV法はこれまでに活発な審議が重ねられてきた。8月初旬に施行令が議決し、これによりIPTVにおいて、地上波テレビ放送の番組をそのまま放送できることが可能となる。

KTのような自社ネットワークを持たない事業者であっても、IPTV事業への進出が可能となるほか、資産額が10兆ウォン(約1兆664億7283万円/1円=0.1066ウォン)未満の大企業でもIPTVでニュースチャンネルなどを持てるようになるなど、より多くの企業がIPTV事業を行える内容となっている。

現在、韓国でIPTVを提供しているのはKTのほかに、Hanaro Telecom、LG Powercomの3社。いずれもこれまでのVOD(Video On Demand)方式による映像配信に加えて、地上波放送のリアルタイム放送も始める予定で、今秋以降のサービス開始に向け準備を進めている。

さらにポータルサイト「Daum」を運営するDaum Communicationsも、セットトップボックスメーカーのCelurnと提携してジョイントベンチャーを設立。IPTVサービスの提供を目指している。施行令公布により、IPTV事業参与への動きはますます強まりそうだ。

IPTV時代に向け先手を打つKT

KTではIPTV事業を強力に推進していくための「IPTV推進委員会」を発足させた。

この委員会は「事業チーム」「品質確保チーム」「戦略支援チーム」といった3チームから構成されている。事業チームはコンテンツやその流通事業などを、品質確保チームはメディア関連技術、ネットワーク運用など品質管理に関する業務を、戦略支援チームはその名の通り、戦略作りなどを、それぞれ担当することとなっている。それぞれのチームには該当分野の業務を行っている本部長クラスの人員が配置されるという。ちなみに同委員会の委員長はナム・ジュンス同社社長。役員自らが就任するところから、KTがいかにIPTVに注力しているかがわかる。

KTでは手始めに、IPTVのリアルタイム放送のため、ネットワークのアップグレードを手掛ける。2008年には7100億ウォン(約757億581万円)を投資し、年末までに加入者の70%をFTTH(Fiber To The Home)に転換させたい考えだ。これに続き2010年までには、これを95%まで引き上げる計画を立てている。

この他にIPTVプラットフォームの増設には約700億ウォン(約74億6395万円)、高品質なネットワーク構築のために約400億ウォン(約42億6511万円)を投資する予定もある。

KTでは「年末時点で、リアルタイム放送サービスの加入者30万人を確保したい」と述べている。目標達成に向け、コンテンツを確保している放送局との協力はもちろん、企業買収するなどして積極的に行ってきた自作コンテンツの確保も加速させる考えだ。

韓国ではIPTV法の施行令に基づいたサービスこそが、本格的なIPTVサービスと考えられており、そうした意味でも新しいサービスが始まることに対する期待感は大変大きい。企業同士の水面下も激化している。