日本テキサス・インスツルメンツ 営業・技術本部 ビジネス・デベロップメント シグナルチェーン AIPグループ グループリーダー 滝川宏之氏

半導体ベンダTexas Instruments(TI)の日本法人である日本テキサス・インスツルメンツは8日、Class-Dオーディオアンプ「TPA2016D2」ならびに「TPA2014D1」を発表した。2製品ともにすでに量産を開始しており、単価は1,000個受注時で1.32ドルからとなっている。

TPA2016D2は、携帯機器などの耐入力が低下するような小型のスピーカーでも、より大きな音量を実現できるように、ソフトボリュームを自動的に増加させるプログラマブルなDRC(Dynamic Range Compression)機能を内蔵している。同機能により、「ダイナミックレンジを圧縮することができ、平均的な音圧をあげることが可能となる」(日本テキサス・インスツルメンツ 営業・技術本部 ビジネス・デベロップメント シグナルチェーン AIPグループ グループリーダー 滝川宏之氏)という。

また、前段のICから定期的に発生するノイズや基板から発生するノイズに対してゲインを増大させない「ノイズゲート」機能を搭載。これにより、無音状態でのゲイン増大、ホワイトノイズ増大の回避などが可能となった。

さらに、I2Cバス経由でDRC機能を設定でき、-28dB~+30dBの間でゲインを設定できるほか、アタック/ホールド/リリース時間、圧縮比、雑音のスレッシュホールド値などの各種パラメータを設定することができる。

DRC機能を搭載することで、平均音圧レベルを高くすることが可能に

このほか、専用ICとすることで、DSPにDRCを実装した場合に比べ、DSPの演算能力を最高20%低減することができるようになるほか、DSPを搭載しないアプリケーションに対してもアンプのみで手軽にDRCのメリットを享受することが可能となる。

「TPA2016D2」の評価ボード(右下の四角い枠の中がオーディオアンプの機能部分となっている)

一方のTPA2014D1は、バッテリー電圧の変化によって生じる音質の低下ならびに音割れをBoost Converterを内蔵することにより、電源電圧範囲を広げ防ぐというもの。トータルの電力効率は85%で、「8Ωのスピーカーで、最大1.5Wの出力を最小電圧まで提供することが可能」(同)という。

電源電圧が変動しても出力電力は一定を維持

また、2.5V~5.5Vの電源電圧範囲、91dBのPSRR(電源雑音除去比)を備えており、電源設計の簡素化が可能となるほか、音質の劣化なしでバッテリに直結して動作させることができる。

さらに、Class-DオーディオアンプとBoost Converterの動作クロックを同期するPLLを内蔵しており、可聴域のビート雑音を低減させることができる。

「TPA2014D1」の評価ボード

滝川氏はTPA2016D2に対し、「日本の顧客からの要求を聞きながら開発した製品。国内の顧客はもとより、海外でも強い引き合いがあり、今後の展開が期待できる」としたほか、TPA2014D1については、「海外でのスピーカーホンでより大きな音を出したいという要求に応えた製品で、現在は1chしか対応していないが、将来的には2chに対応する可能性もある」とした。