2008年7月31日、「QuarkXPress 8日本語版」がクォークジャパン株式会社より発売される。日本語版のメジャーバージョンアップとしては、2004年6月にリリースされた「QuarkXPress 6.1日本語版」以来4年ぶり。2007年2月には「QuarkXPress 7日本語版」のプレビューを行っているが発売は見送られた経緯もあり、期待を持ってQuarkXPressの動向を見てきた読者も多いだろう。ここでは、DTPユーザーからの関心も高い最新バージョンの機能をチェックしていこう。
※本稿では開発途中のQuarkXPress 8日本語版を使用しています。発売時には仕様変更されている可能性がありますのでご了承ください。
ユーザーインタフェースの進化
QuarkXPressといえば、シンプルなユーザーインタフェースが使いやすいと評価する人も多い。新しいQuarkXPress 8日本語版では、ツールパレットやメジャーパレットといったパレット群を使用する際、選択したツールやアイテムに応じてパレット内容が変化する機能が加わった。スタイルシートやカラーパレットは「Adobe InDesign」のように関連機能を連結し、グループとして管理できる。
もう一つ、「ウインドウ分割機能」もユニークだ。これは、ひとつのプロジェクト(ドキュメント)のプレビューを分割表示する機能で、複数の場所を同時に表示できる。ページ物のレイアウトでは目次と章扉を同時に表示するなど、ユーザーのアイデア次第で便利に使えるだろう。
PSDファイルもドラッグ&ドロップで配置可能に
最近のレイアウトソフトは、オブジェクトをドラッグ&ドロップで配置できるのはもはや当たり前の機能と言って良い。QuarkXPress 8日本語版でもこの機能が搭載され、EPSやTIFF、JPEG、PSD、AIファイルをドラッグ&ドロップで配置できるようになった。
中でもDTP関係者に嬉しいニュースは、PSDファイルおよびAIファイルへの対応だろう。PSDファイルは、新たに加わった「PSD Import」パレットでレイヤーやクリッピングパス、チャンネルの指定が可能。このパレットはPhotoshopに似たインタフェースで、初めて使っても違和感なく扱える。筆者が検証したところ、AIファイルはAdobe Illustrator CS3で保存したファイルは配置できたが、Adobe Illustrator 8で作成したデータはプレビューが生成されなかった。もちろん、EPSファイルはPhotoshop、Illustratorともに問題なく扱える。
また、画像ボックスツールは「画像コンテンツツール」へと進化した。トリミング中のプレビュー表示や回転、拡大縮小が直接できるほか、コンテクストメニューには「画像をボックスに合わせる(縦横比を固定)」が追加された。これで、画像の大きさの比率を保ったまま、ボックスサイズを自動調整できる。
フォント&文字組版環境の進化
QuarkXPressは、DTPソフトの中でもOpenTypeフォントへの対応で後れを取ってきた。前バージョンが発売されたのが4年前であることを考慮すれば致し方ないことだが、ようやく今回、OpenTypeフォントの全機能が利用できるようになった。もっとも期待されていた異体字の選択には「字形」パレットを用意。任意の選択した文字の異体字表示や、お気に入りの登録など、パレットの操作方法はInDesign CS3と変わりない。
また、メジャーパレットにはOpenTypeフォントメニューが加わり、詰め情報を使用したプロポーショナルメトリクスや合字といったフォントフォーマット固有の設定も行える。段落設定には新しく7種類の日本語用文字組セットが加わり、初心者でも組版ルールに則ったレイアウトができるようになった。もちろん、既存のスタイルシートを読み込んで作業することもできる。試しにQuarkXPress 4.1Jのスタイルシートを読み込んだところ、問題なく動作した。旧バージョンのドキュメントを多くもつユーザーには安心できる情報だろう。
そして、グリッド設定が導入されたことも組版機能の新しい部分だ。このグリッド設定は、マスターページまたはテキストボックスごとに個別のグリッドを適用でき、文字数や行数、文字揃え、行間および文字間など、組版に必要な要素のほとんどを設定できる。文字の総数も予測できるため、エディトリアルデザインに多い先割りレイアウトを行う上で役立つ機能と言えるだろう。