透明機能とドロップシャドウをサポート

デザインワークに関連した新機能では、透明機能とドロップシャドウのサポートが挙げられる。透明機能は、オブジェクトの不透明度を0~100%で指定可能。ドロップシャドウは、角度や距離、ぼかし、色、シェード、不透明度など細かい設定が行える。透明設定はカラーを対象に行うため、ブレンド(グラデーション)を指定した色に対して個別に設定すれば、画像編集ソフトを使用したような効果が得られる。ちょっとしたデザインのアクセントであれば、QuarkXPressだけで間に合ってしまいそうだ。

ドロップシャドウ、透明機能などグラフィックアプリケーションが備える機能をレイアウトソフト自身で持つことの利便性は大きい

なお、ベジェ曲線も格段に描きやすくなったことも付け加えておきたい。従来のベジェペンツールは、残念ながら予想した線を描くことが難しかった。新しいベジェペンツールではスムーズに線を描画でき、使用感はAdobe Illustratorに近い。これであれば、曲線を使用したオブジェクトもイメージ通りのものが描けるだろう。

PDF/Xの書き出しに対応し、プリフライト機能も充実

PDFへの書き出し機能は以前からサポートしていたQuarkXPressだが、今回のバージョンアップでPDF/X-1aおよびPDF/X-3への書き出し機能に対応した。PDFの取り込みは最新バージョンである「1.7」まで対応している。

待望のPDF/Xへの対応も果たした

また、EPS形式のページ保存を行う際にはフォントをエンベッドできる機能も搭載。これまでEPS形式の画像データは2バイトフォントが正確に表示されなかったり、文字化けを起こすことがあった。EPS書き出し時にフォントがエンベッドされるようになったことで、この問題は解決されたと言えるだろう。

「ジョブジャケット」でプリフライトを実行

QuarkXPressには、昔から出力ファイルの収集機能はあったがプリフライト機能は搭載されていなかった。QuarkXPress 8日本語版に搭載された「ジョブジャケット」は、あらかじめメディアタイプや画像カラースペース、トラッピング処理、透明の使用/不使用など制作条件を決定し、このルールに則ってデータを制作する指針となる機能だ。

このジョブジャケットを利用すれば、出力前にドキュメントのプリフライトチェックを行うことができる。「画像はTIFF形式でなければならない」、「カラースペースにRGBを使用してはいけない」など、案件ごとに安全な出力のために欠かせない条件を作成しておけば、専用プリフライトソフトを使用することなくドキュメントの確認が行えるだろう。

プリフライトのチェック項目は細かく設定することが可能

なお、ジョブジャケットに登録できるのはH&Jやダッシュ&ストライプなどQuarkXPress独自のリソースも含まれる。設定内容はXMLファイルとして書き出せるので、グループワークで共有すれば混乱のないワークフローを構築できる。

QuarkXPress 8は期待できる?

駆け足で紹介してきたQuarkXPress 8日本語版。 前回のリリースから4年を経たメジャーバージョンアップだが、これまでにユーザーから寄せられた要望はほぼカバーされていると言って良いだろう。

Universalアプリケーションとなったことで、2x2GHz Dual-Core Intel Xeonを搭載したMac Proでの動作もライバルであるAdobe InDesign CS3と遜色のないレベルだ。ただし、現在のところ「Mac OS XでDTP」といえばAdobe InDesign CSに大きく水をあけられてしまっていることは否めない。この状況を打破するには、旧バージョンのQuarkXPressユーザーへの魅力的な(適正な価格での)バージョンアップへの提案が不可欠だ。まだMac OS 9+QuarkXPress 4.1(場合によっては3.3)で作業している環境も多い中で、QuarkXPress 8日本語版がDTP環境のMac OS Xへの移行に拍車を掛けるかどうか、新たな船出に期待したい。