SAS Institute Japanは、電子商取引サイトなどのWeb上での顧客の行動データを収集し、分析することが可能なソリューション、「SAS Customer Experience Analytics」を7月1日から出荷開始する。これらのデータを、顧客情報や購買情報と統合して分析することにより、カスタマ・エクスペリエンス(顧客経験価値)の分析ができ、具体的なマーケティングなどに活用することが可能になる。

SAS Institute Japan ビジネス開発本部 CIビジネス開発部長 高橋昌樹氏

"SAS Customer Experience Analytics"は、エンドユーザーが、Webサイトを訪問する際のさまざまな動向そのものを捕捉できることが大きな特徴だ。Webサイト来訪者についての分析は従来、最初に訪れるページはどれか。どのページにエラーが多いか。検索される内容、あるいはキーワードではどれが多いか。自社のページを知られた理由、どこからたどり着いたか、など「ほとんどがWebページの分析になっていた。顧客の観点が抜けている」(同社 ビジネス開発本部 CIビジネス開発部長 高橋昌樹氏)ことが、1つの限界だったと同社ではみている。

今回の製品は、誰が、ある商品に注目しているか。なぜ、この顧客は途中でサイトから離れていったのか。誰がその商品に興味を持っていそうなのか。本当の顧客は誰か、といった「事実」を把握する。「"何人"が、ではなく、"誰"が、"なぜ"ということを主体に」(同)カスタマ・エクスペリエンスを捉え、顧客へのサービス、対応の仕方の改善につなげることができる。

同社によれば、顧客は、期待している水準以上の「経験価値」を提供できる企業に好感をもつ傾向があることから、顧客の「期待」を正しく理解し、対処するカスタマ・エクスペリエンスの分析や管理は重要性を増しているが、従来のCRMでは購買や問い合わせといった、顧客の最終的な行動結果だけを管理しており、顧客の"期待"や"経験価値"を把握するのは困難だったという。

"SAS Customer Experience Analytics"は基本的に、Web上の顧客行動を記録する機能と、顧客情報との統合を行うデータ統合、Webデータ分析に適した標準データモデルと分析テンプレート、分析機能などから構成される。収集した、ユーザーのサイト上での行動データから、オンラインでの、顧客の動態を確認、判別できる指標を作成、それを「顧客の属性データ、取引実績のデータなどと関連付け、顧客をより深く知るための情報として活用していくことができる」(同)。

例えば、ある電子商取引サイトを初めて訪れたユーザーは、製品の概要をざっとみて、ユーザーからのレビューを斜め読みした後、購入を決定、その間20分であったが、別のユーザーは、製品画像を念入りにチェックし、ユーザーレビューを熟読、価格比較サイトに移動、その後、中古商品をチェックするなど、65分も費やしながら、結局購入しなかった、というような例があったとすると、「なぜ、購入につながらなかっただとか、このような行動から見て取れるデータにより、さまざまなことがわかる」(同)。購入実績のある顧客には、購入までの時間、行動などに応じ、適時な情報提供、あるいは、割引きなどの策を講じることで、販売機会の増加、高額商品への誘導に結びつけることが可能になるという。

従来、Webページ分析は、膨大なデータの加工と解釈に工数がかかり、「社内データと紐付けたカスタマ・エクスペリエンスの分析にまで到達することは困難だった」(同)が、"SAS Customer Experience Analytics"では、Webページ分析を容易化する標準データモデルと、データの活用に適したデータモデルにより、社内に蓄積された顧客データ、購買実績データとの紐付けが容易に実現できる。

また、"SAS Customer Experience Analytics"では、Web上でのユーザーの行動を把握するためのログを取得するための機能を「1行程度のタグを埋め込むだけで済む」(同)とともに、ETL(Extract/Transform/Load)プロセスは80以上、Information Mapでは30以上のテンプレートを用意しており「1カ月程度で導入できる」(同)ようになっている。

SAS Institute Japan 執行役員 ビジネス開発本部長兼プロフェッショナルサービス本部長 宮田靖氏

同社 執行役員 ビジネス開発本部長兼プロフェッショナルサービス本部長 宮田靖氏は「近年、いわゆる、"見える化"が重視されるようになっているが、それだけでは不十分で、(ある事象について)なぜそうなるのかの分析、その先どうなるかの予測、最適な選択肢、この3つが重要になる」と指摘、"SAS Customer Experience Analytics"は、分析、予測、最適化を支援する製品であることを強調する。

同社では、この製品の想定ユーザーとして、オンライン販売の小売業だけではなく、顧客向けのWebマーケティングを展開しているすべての業種も念頭においており、同社のマーケティング支援ソリューション「SAS Customer Intelligence」などとの連携が理想的と考えているが「単体でも効果はある」(同)としている。