凸版印刷の創立100周年事業として2000年にオープンした印刷博物館。印刷の文化・歴史に関係した資料のコレクション、研究、展示などを通して、ひろく啓蒙活動を行っている。なかでも、活字を使った活版印刷を実際に体験できる「印刷の家」は、参加型展示として人気を集めている。そこで今回は、「印刷の家」活版印刷体験に実際に参加し、活版印刷の魅力と面白さをレポートしよう。

ガラス張りの向こうが活版印刷体験工房「印刷の家」

ふわりと漂うインクの香り……工房に足を踏み入れる喜びを実感

筆者が今回体験したのは、「名前入りオリジナル一筆箋」づくり。活字を拾い、自分の名前などを一筆箋に印刷できるという、約30分の無料体験コースだ。この体験コースは毎週木曜~日曜・祝祭日の15:00に開催されていて、参加は定員制で先着6名。受付開始は10分前からなので、確実に参加したいなら早めの博物館入りをお勧めしたい。

参加の申し込みをすると、簡単な作業手順が書かれた説明書と一緒に、7字分の空白のマスが印刷された"参加申し込み書"が手渡される。この7字分のスペースを使って、印刷用に自分の名前をレイアウトするのが最初の作業となる。名字は2分アキ、名字と名前は全角アキで……などとあれこれ悩むが、自分の名前に改めて向き合う感覚が新鮮で楽しい。もちろん、レイアウトに関する知識がなくても、インストラクターの方が丁寧に教えてくれるから安心してほしい。

レイアウトが決まったら、いよいよ工房の中へ。入口をくぐった瞬間、インクの香りに鼻をくすぐられる。活版印刷最初の体験は意外にも嗅覚からだった。工房内でインストラクターの方から、活版印刷の仕組み、活字の構造といった簡単なレクチャーを受ける。体験用に用意された活字は、フォントサイズが12ポイントのものが約3,000字。この文字数はJIS第一水準漢字に匹敵する数とのこと。「文撰(活字棚から活字を1本1本拾うこと)」のプロは、壁一面に活字が並ぶ活字棚から3秒に1字以上のスピードで活字を拾い出すそうだ。

作業手順が書かれた説明書。もちろん活版印刷で制作されている

インストラクターの方の説明に熱心に聞き入っている参加者

壁一面に並んだ活字の山!