ベリングポイント ワールドクラス・ファイナンスシニアマネージャー 山田和延氏

ベリングポイントは20日、同社における「工事進行基準」への取り組みについて説明した。「まだ、日本では工事進行基準に準拠した形で業務を行っているソフト開発会社は少ない。当社の場合は、親会社が米国の証券市場に上場していることから、すでに数年に渡り、工事進行基準を適用している。米国会計基準、国際会計基準で用いられている手法は、日本で今後導入される工事進行基準と同様のものが盛り込まれている」と、ベリングポイントのワールドクラス・ファイナンスシニアマネージャーの山田和延氏は語る。

工事進行基準は、決算期末に、工事進行程度を見積もり、適正な工事収益率によって工事収益の一部を当期の損益に計上するというもの。これまでソフト開発会社のほとんどが工事完成基準制度を導入しており、システムが完成し、引き渡しが完了した時点で工事収益を計上するという手法であった。

工事完成基準では、確実性が高い段階での売り上げ計上という観点で、客観性、確実性があるが、工事が大規模化、長期化するに従い、企業活動の実態を表すことが難しいという課題がある。

一方、工事進行基準では、適正に進捗管理が行われている場合には、企業実態を表しやすいという特性があるものの、工事契約に関し、工事収益総額、工事原価総額、工事進捗度を信頼性をもって見積もる必要があり、それらを行うために、これまでの商習慣を見直す必要に迫られる場合もある。

「ハード、ソフト、保守までを含めた一式契約や、正式な契約を結ぶ前に開発プロジェクトをスタートさせるといったことができなくなる。また、見積もりの要素が多く含まれることから、プロジェクトマネージャーだけの判断では危険とされ、上長や品質管理部門の承認体制など管理面を強化する必要がある」(山田氏)というわけだ。

会計基準上では、工事進行基準を導入することが義務化されてはいないが、税法上では、1年以上、10億円以上というプロジェクトに関して工事進行基準適用の対象になるという。また、これ以下の規模のプロジェクトに関しては、工事収益総額、工事原価総額、工事進捗度を見積もれることを条件に、ソフト開発会社側が工事進行基準の適用に関して独自に判断し、監査法人の審査の上で適用することになる。3つの条件のうち、1つでも守れない場合には、従来通りに工事完成基準でもかまわない。

だが、「工事収益総額、工事原価総額、工事進捗度というのは、受注案件の管理においては、いわば大原則といえるもの。これができないというのは、管理能力に問題があるということを示しているようなものであり、発注元に対する信頼性を損なうものになる」というのも当然だ。そのため、多くのソフト開発会社において、税法で示された規模、期間とは別に工事進行基準を採用する動きがある。

ベリングポイントでは、工事進行基準に適用するするため、社内の受注管理情報システムと、人員管理情報システムを活用。案件を獲得する前から、受注情報、受注確度、受注した際の人員配置のシミュレーションを行うといつた取り組みを行っている。

また、発注元に対する提案書や見積書は、上級管理者2人の承認とともに、社内の品質管理部門の承認を得てから提出。さらに、独自に作成しているリスク情報シートに、各項目ごとに、Yes/Noで回答することによって、リスクを定量化して分析。予想されるリスクが許容範囲であるかどうかを推し量ることになる。

受注後には、契約書の項目のすべてに記載され、不備な点がないことを確認して、初めて社内に対して必要書類の正式提出となる「コード登録」を行い、ここで工事収益総額、工事原価総額などが明確に規定されることになる。

工事進捗度に関しては、毎月2回行われるタイムレポート報告によって、業務進行の進捗状況、経費の使用状況、開発者の勤怠管理などが行われる。タイムレポートには、プロジェクトへの関与工数が30分単位で記入されており、プロジェクトに関連した費用も精算できるようになっている。同社社員は、タイムレポートを提出することが義務化されており、リモートアクセスによる提出が可能となっている。

ベリングポイントにおける工事進行基準適用への取り組み

ベリングポイント 顧問 川野克典氏

また、月1回ずつ、プロジェクトごとに損益の見通しについての報告が行われ、ここで必要に応じて見積もり、原価修正の必要性などについても協議されることになる。さらに、毎月の工事の進行状況に応じた形で、発注元に請求を行い、その回収についてもプロジェクトマネージャーが責任を持って行うことになる。最後にプロジェクトが終了すると、速やかに社内において、プロジェクト終了手続きを行う、という仕組みだ。

「工事進行基準の適用によって、プロジェクトの進捗が明らかになること、完成成果物についての齟齬がなくなること、納期が遵守されやすいなどのメリットがある」としている。

同社顧問の川野克典氏(日本大学商学部准教授)は、「2009年以降、工事進行基準が始まるが、すでに、2008年から四半期報告、リース取引、関連当事者など会見基準が大きく変更している。ここの経営基準が変わるというのではなく、経営のルールそのものが変わる時期に入ってきたとの認識が必要であり、工事進行基準の適用も、経理の問題ではなく、経営の問題という観点で捉える必要がある」とした。

ベリングポイントにおける工事進行基準事例