NEC 執行役員常務 井田敏氏

NECは16日、2007年度のNECグループの環境活動実績と、同社が推し進める「NEC環境経営ビジョン 2010」の進捗、達成状況をまとめた「NEC環境アニュアルレポート 2008」を発行したことを発表した。

NEC環境経営ビジョン 2010は、同社が2003年3月に発表した、環境経営を長期的に方向付けて具体的な事業活動と連動させ、持続可能な事業経営への変革を促進するための長期ビジョン。

主な取り組みは、以下の3点。

  1. NECにおける生産活動およびオフィス活動におけるCO2排出量の削減
  2. NEC製品の使用によるCO2排出量の削減
  3. ITソリューションの提供を通じた顧客、社会のCO2排出量削減への貢献

同社執行役員常務の井田敏氏は、「1と2の取り組みをどれだけ進めたとしてもCO2をゼロにすることはできない。その代わりにITソリューションを通じて社会全体のCO2排出量を削減。これにより、実質的にCO2の排出ゼロを目指す」とする。

事業活動で生じるCO2の量と、ITソリューションの活用で社会から削減できるCO2の量とでバランスを取る

2007年度に行った主な活動としては、生産・オフィス活動では、ハードウェアおよびソフトウェアの生産革新による生産性向上や、高効率省エネ設備の計画的導入、データセンターの省エネ化、オフィス部門の省エネといったエネルギー起源のCO2排出量削減を行った。

生産・オフィス活動におけるCO2排出量削減

NEC CSR推進本部 環境推進部長 斎田正之氏

「工場では、生産性の改善とつながった活動を実施しており、ガスヒートポンプ空調設備の導入によってCO2を年73.4t削減できたほか、照明への反射フィルム取り付けによる照度向上と間引きを行うことで年51tのCO2削減効果を生み出した」(同社CSR推進本部 環境推進部長 斎田正之氏)とする。

また、オフィスでも照明器具安定器の省エネタイプへの変更や昼光利用照明システムの導入などにより、2010年度までにCO2排出量を最大1万t削減するという。

さらに、半導体やLCD事業におけるPFC、HFCなどのCO2以外の温室効果ガスの排出量削減を行ったほか、物流改革では、航空便の削減、定時定ルート便の割合増加などにより、前年度比9,000t減となる4万8,000tへと改善がなされた。

これにより、2007年度の生産・オフィス活動におけるCO2排出量は、前年度比12.4%減となる198万tへと削減されたという。同社では、2010年度には2000年度比で38.5%減となる102万tのCO2総排出量の削減を目指すとしている。

2010年度には2000年度比で102万tのCO2排出量削減を目指す

一方、製品の使用で生じるCO2排出量の削減については、シンクライアントの普及拡大、データセンターの省電力化などを行うことにより、2007年度比で2010年度に25万tの削減を目指す。

製品の使用で生じるCO2は2010年度で2007年度比25万tの削減を目指す

また、グリーンITへの対応としては、省電力プラットフォームや省電力制御ソフトウェア、省電力ファシリティサービスの提供などにより、2012年までに顧客のITプラットフォームが消費する電力を年間50%、IT機器のCO2排出量を累計で約91万t削減することを目指すとしている。

グリーンITへの対応として、2012年までにIT機器のCO2排出量を累計約91万tの削減を目指す

ITソリューションの提供を通じた顧客、社会のCO2排出量削減への貢献としては、ブロードバンドオフィスやサテライトオフィスの充実によるワーク/ライフスタイルの変革や、ITSインフラの提供などによる社会インフラの整備などを推し進めることで、2010年には2007年度比で115万t削減量を増大させ220万tとすることを目指す。

ITソリューションの提供を行うことで、顧客や社会のCO2排出量を削減

また、総務省が試算して2005年3月に公表した「ユビキタス社会の進展と環境に関する調査研究報告書」では、ITソリューションが環境に与える効果としては、総計2,650万tの削減が見込めるとしている。同社でも「自社ITソリューションの提供を進めることで、そのうちの1割を占めることを目指して事業拡大を進めていく」(斎田氏)とし、京都議定書で定められた第一約束期間(2008年~2012年)に累計で1,000万tの貢献を目指すとした。

ITソリューションによるCO2排出削減効果は2,650万t。この内1割をNECが占めることを目指す

2007年度の活動を終えて、2010年度の目標に向かっての進捗状況はというと「生産・オフィスの活動については7~8割程度の進捗率だが、製品の使用におけるCO2排出量削減はIT製品が増えていることから道半ば、ITソリューションの提供にいたってはまだ踏み出したばかり」(斎田氏)としている。

また、「社会全体が環境に配慮したものへと変化しなければ意味がない」(斎田氏)としており、今後は社会全体が変革を遂げる一端に寄与していけるような取り組みを積極的に進めていくとした。