日本オラクルは3日、電気・ガス・水道といった公益業界に特化したアプリケーション製品群「Oracle Utilities」の提供を開始した。公益事業向けアプリケーションには、環境問題への取り組みや規制緩和への柔軟な対応など、他の業種とは大きく異なる機能を求められるが、同製品はすでにグローバルでの豊富な導入実績をもち、新規市場である日本においても「業界に特化したトータルソリューションを提供できるのはオラクルだけ」(米Oracle ユーティリティ・グローバル・ビジネス・ユニット シニア・バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー クエンティン・グラーディ氏)と、自信を見せる。

Oracle Utilitiesは、料金/顧客管理アプリケーション「Oracle Utilities Customer Care and Billing」やメーターデータ管理アプリケーション「Oracle Utilities Meter Data Management」、ネットワーク管理システム「Oracle Utilities Network Management System」などから構成されるアプリケーション製品群。2006年11月にOracleが買収したSPL Technologiesのポートフォリオがベースになっている。今回、日本で提供開始されたのはOracle Utilities Customer Care and Billing(以下、Oracle CC&B)で、電気・ガス・水道事業の販売業務に必要な料金設定や顧客サービス、契約管理、検針、請求管理、メーター管理など、業界固有の機能を提供する。価格は10万契約顧客あたり6,250万円(税抜き)から。

グラーディ氏は、公益業界は「地球温暖化防止など環境問題への対応を筆頭に、原材料価格の変動や規制緩和など、業績に影響を与える要因が特異で変化が激しい」と指摘、ダイナミックな市場の要求に応えるためには「ミッションクリティカルなアプリケーションを一気通貫で管理できるソリューションが必要」とし、インフラから業務アプリケーションまで、業界に特化した環境を提供できるオラクルこそが「それを実現できる唯一の企業」という。

オラクルの公共業界向けソリューション。Oracle CC&Bは、Oracle EPMやOracle Applicationsと連携しながら、右上の「一般業務」と「顧客」部分にまたがる機能を提供する

Oracle CC&Bの操作画面。もちろんインタフェースもすべて日本語化されている。顧客中心の管理を行うことができるるように構成されており、実態に則した柔軟な運用が可能

また、グラーディ氏が繰り返し強調していたのが、Oracle CC&Bによる「TCO削減」効果だ。「公益事業者はIT予算の40 - 60%をシステムの開発とメンテナンスに割いている。複雑化したシステムをOracle CC&Bによってシンプル化することでメンテナンス費用を、そしてオープンな開発環境の下で開発コストを下げることで、結果としてTCO全体の低減につながる」(同氏)とする。また、「スモールスタートの導入が可能で、顧客増などの変化に応じて規模を拡張できる」(同氏)拡張性も特長のひとつだ。

現在、オラクルは、ここ数年の買収で培ったポートフォリオをSOA基盤で統合する作業を進めており、Oracle Utilitiesもその戦略の一環として提供されることになる。日本オラクル 常務執行役員 エンタープライズアプリケーション営業統括本部長 桑原宏昭氏は「実は1年くらい前から、ひそかに(国内の)公益業界向けの戦略を開始していた」と語り、今回のOracle CC&Bの投入で、カスタマイズされたシステムの導入が多い公益業界に向けて、パッケージソリューションの導入を進めていく準備が整ったことを示した形だと言える。