Tukwilaで採用された新技術で、QPIのように目立つ新技術ではないが、玄人受けのする渋い新技術として、電源制御技術とソフトエラー耐性の改善技術がある。

Itaniumは、2世代前のMontecitoでも消費電力やチップの温度をセンスして電源電圧やクロック周波数を制御する方式を導入していた。しかし、この技術はなかなかうまく動かずお蔵入りになってしまったと思われる。そこで、今回のTukwilaでは、アナログで消費電力をセンスする方式に替えて、フルディジタルの新制御方式を開発した。

CMOSプロセサでは、回路が動作することにより寄生容量の充放電でエネルギーを消費する。従って、プロセサを構成する各ユニットの動作状態を把握できれば、アナログ的に電源電流をセンスしなくても消費電流を知ることができる訳である。この原理に基づき、Tukwilaでは4つのコアそれぞれで約120種のアーキテクチャ的な動作をモニタし、QRロジックと呼ぶユニットで各動作に対応する消費エネルギーをディジタルに加算し、約7マイクロ秒ごとに消費電力を算出する。そして、消費電力が増加し電源ドロップが大きくなると、クロック下げたり、電源電圧を上げたりし、逆に消費電力が少なくなると、電源電圧を下げて消費電力を減らしたり、クロックを上げて性能を上げるという制御を行う。このQRロジック部は4M Trで、面積は3平方mmと発表された。

大容量の電源の電圧を短時間で変化させることは困難であるので、Montecitoでは、急激な電流増加の場合にはクロックを下げて対応していたが、Tukwilaでも同様なコントロールが行われている可能性がある。Tukwilaは、このクロック周波数の切り替えのために2個のPLLを持っており、一方のPLLで動作している間に、他方のPLLを新しい周波数にロックさせ、マルチプレクサで切り替えるという方法によりを、高速のクロック切り替えを可能にしている。

なお、各動作に対応する消費エネルギー値はヒューズROMに書き込まれ、このデータは同一の定格のチップでは同じになっており、Montecitoのアナログ方式のようにチップの出来により、チップごとに動きが変わるということが無い。

また、急激に動作状態が変化し電源電流が大きく変化すると、チップのパッケージの電源ラインのインダクタンスにL*di/dtの電圧が発生し、大きくアンダーシュートや、オーバーシュートが発生したりする。これでは電源電圧が低下して誤動作をしたり、過電圧でゲート絶縁膜がダメージを受けて故障に繋がったりするという問題がある。この問題に対処するため、Tukwilaでは一定のリミット以上の電源電流変動(di/dt)が計算されると、アイドルサイクルなどを挿入して電流変化が起こる時間を延長することによりdi/dtを減少させ、電源ドロップやオーバーシュートを減少させるという制御を行っている。論文発表では、40Aから120Aへの電源電流増加を、このdi/dtコントローラで3分割して階段状にした場合の電流波形が示された。これにより電圧ノイズを30~50%減少させることができるという。